1人のクレームで公園が廃止になるというニュースを追いかけてみました

2022年暮れに、「長野の公園廃止」というニュースが注目されていました。

経緯

ことの始まりは18年前。

長野市内の土地について、地区からの要望を受けて長野市が民有地を買い上げるかたちで「青木島遊園地」を整備しました。

ところが、開設当初から、ある1軒が「子どもの声がうるさい」と苦情が上がるようになります。

これに伴い、地元(区長会名義)からも廃止の要望書が出され、長野市では今年度(2022年度)末で廃止する方針を発表した、というのが概略です。

責任者について

長野市長は荻原健司氏。1969年生まれ、スキー・ノルディック複合の選手として知られ、参議院議員を1期(2004〜2010年)務めています。長野市長に就任したのは2021年。

問題発生当時(2004年)の長野市長は鷲澤正一氏。その後、加藤久雄氏を経て現在の荻原健司氏に。

廃止を判断した理由

●児童センター、保育園、小学校に囲まれた立地の特性から遊園地利用者が集中する環境
●現在、遊園地がほとんど使われていない状況
●近隣施設の管理者からの「これからも遊園地は使わない(現状では利用が実質困難)」というご意見
●設置を要望した地元区長会からの廃止の要望
●愛護会活動の担い手がいないこと
●遊園地用地が借地であり、今後も借地料が発生していくこと
引用:長野市ホームページ「青木島遊園地の廃止を判断した経緯について」
以上を「総合的に考えて遊園地の廃止を判断」という長野市の見解を示しています。

経緯についてはA4用紙2枚の説明文が公開されています。
青木島遊園地の廃止を判断した経緯について

その他

ネットでは、ソープランド開業の許可を下さないという「まじめ」で「頑固」で「融通が利かない」という長野県の県民性を引き合いに出して、子育てしづらいエリアであるとか、少子化に逆行しているといったいちゃもんもつけられているようです。

嫌悪施設について

このように、周辺住民とトラブルになりやすい施設については、不動産業界で「嫌悪施設」と呼ばれ、売買や賃貸借のときに問題になったりしています。

住宅地近辺における主な嫌悪施設は以下のとおり。
【騒音や振動を発生させるため】高速道路等の主要道路、飛行場、鉄道、地下軌道、航空基地、大型車両出入りの物流施設 等
【煤煙や臭気(悪臭)を発生させるため】工場、下水道処理場、ごみ焼却場、養豚・養鶏場、火葬場 等
【危険を感じさせるため】ガスタンク、ガソリンスタンド、高圧線鉄塔、危険物取扱工場、危険物貯蔵施設、暴力団組事務所 等
【心理的な忌避が促されるため】墓地、刑務所、風俗店、葬儀場 等
参考:不動産流通推進センターホームページ

宅地建物取引業法第47条では、不動産業者が売買や賃貸借の勧誘の際に、「故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為」を禁じています。

このなかに嫌悪施設と呼ばれるものがどれだけ含まれるかというと、実際に法律で告知義務があると明確に定められているわけではありません。ケースバイケースなので当然かもしれませんが。

青木島遊園地のケース今回の青木島遊園地のケースでは、遊園地が嫌悪施設であるとは認識されておらず、そもそも苦情を発している家よりも後に遊園地ができているということで、不動産業界の慣例からすれば得に問題があるとも認識せずに計画が進行してしまったと考えられます。

そこで問題を行政と住民という視点で見直してみると、周辺住民への説明が不十分だったのではないかという点が浮上してきます。

実際に、NHKの取材などでは、「一部の住民からは、市側から事前に説明がなかったという声も上がって」いるとのこと。

この土地活用の経緯が、「地区からの要望を受けて長野市が民有地を買い上げるかたち」だったことで、賛成しているのだから説明は省いたとも考えられます。

今後は・・・

荻原市長は12月12日の定例会見で、関係者に直接会って確認したい」と述べています。今後、住民の代表と意見を交わす考えがあるとのこと。

ただ、あくまでも「廃止する」という判断は堅持したうえでの説得になるそうですが、輿論の風によって変わるかもしれませんので、続報を追ってみたいと思います。