ロシアのウクライナ軍事侵攻1年と「はだしのゲン」

2023年2月24日は、ロシアがウクライナへ軍事侵攻を始めて1年という節目になりました。

いまだ解決の道はほど遠く、逆に周辺国を巻き込んでの地政学的リスクが高まってきていると言えるでしょう。

こうしたニュースに隠れるようにして、広島市教育委員会が2023年度の私立小学校3年生向けの平和学習教材から「はだしのゲン」を削除するというニュースが流れてきました。

これに対して被爆者でつくる団体や教職員で作る組合など6つの団体が、削除しないように求める連盟の要請書を提出しています。

メディアの論調も「臭いものに蓋をする」というものが多いように感じますが、その内容を探ってみましょう。

まず、広島市教育委員会の対応について。

1)漫画「はだしのゲン」を「別の被爆者体験談に差し替える」ことに。

2)その理由は「はだしのゲン」では「被爆者の実相に迫りにくい」から。

3)実相に迫りにくい例は、「浪曲は現代の児童の生活実態に合わない」「コイ盗みは誤解を与える恐れがある」という部分。

「コイ〜」については、ポリコレでそういう意見になるかもと思いながら、注釈を付けることで対応できなくもないのではと思ったりします。

教育現場でそうした手間を惜しむ風潮があるやもしれませんが、そちらのほうが心配になりそうな問題点です。

浪曲もしかり。しかし、「ニュース系YouTuberみたいなもの」という説明で済むような問題とも思ったりします。

広島市教育委員会のコメントに「状況などを補助的に説明する必要が生じ、時間内に学ばせたい内容が伝わらないという声があった」とありますが、「なにを学ばせたいのか」という視点のズレが、メディアをいらだたせる原因になっているとも思ったりします。

「はだしのゲン」については、松江市教育委員会が2012年に学校図書としての閲覧を制限する要請を出して、撤回に追い込まれるという事例もあります。

掲載しなければいけない、読まなければいけない──というところに反対派の押しつけがましさが出ているとするような論調が、この問題の論点のズレを(わざと)生じさせているかもしれません。

もしかすると、5月に開催されるG7広島サミットを前にした“忖度”なんじゃないかと邪推したくなるようなニュースだったので、拾い読みしておきたいと思いました。