マンション管理組合で役員報酬を支給するときに気をつけたいポイント

 

「マンション管理センター通信」2014年2月号の「役員報酬等の授受を認めるための適切な枠組みづくりについて」という記事。

 

5310256279_2906424d6f_m photo by ericcommando89

 

著者は……

 

佐藤貴美法律事務所の佐藤貴美弁護士。

 

平成20年度マンション総合調査では、「役員全員に報酬を払っている」17.7%、「理事長のみに報酬を支払っている」1.2%、「報酬は支払っていない」75.6%という結果が出ています。

 

役員報酬等は管理組合の財産から拠出されるため、その扱いには慎重を要するという趣旨です。

 

標準管理規約ベースで役員が報酬等を受領できるようにするためには、まずは総会決議に基づき「役員報酬規定」等を制定し、そのうえで、毎年度(ないしは役員の改選期ごとに)その金額と支払方法につき「総会決議」を経るという枠組みが求められているということになります。

毎年度の総会決議は、すでにある報酬規定等にもとづく財産の拠出についてですので、必ずしも「役員報酬等について」などといった個別の議案である必要はなく、当該費用が明記された年度予算案の承認決議があれば、当該手続きは満たされたということが出来るものと思われます。

 

仮に「役員報酬規定」等がなかったとしても、毎年度ごとに役員活動費の額および支払方法が総会で決議されていたのであれば、その趣旨は一応満たされることになり、不当な対応とまではいえないということになりましょう。

総会における議案の設定には配慮が必要であり、基本的には「役員報酬等について」などといった単独の議案を設定して決議されていることが望まれます。仮に年度予算案の承認決議のみであった場合には、当該予算書のなかに役員報酬等が明示され、その内容等について議案書中で十分に説明がなされていたことが必要と考えられます。

 

役員報酬については、国土交通省が実施した平成20年マンション総合調査の結果によれば、役員報酬が一律の場合の報酬額の平均は月額3,600円、一律でない場合には理事長は1万円超が最も多く(一律でない管理組合全体の21.2%)、理事長以外の理事は平均月額5,500円となっています。

 

個人的には、役員のなり手不足を解消するためのインセンティブとして報酬は必須と考えていました。

しかし、実際にいくつかの関係している管理組合で導入してみたところ、あまり効果はないというところが正直な感想です。

 

報酬を授受することによって責任が重くなり、より働かなくてはならないという逆効果を生んでいるような面も垣間見ることができます。

役員の負担を減らすには報酬ではなく、業務を明確化してアウトソーシングを積極的に取り入れるなど、別のお金の使い方が必要ではないかというふうに考え方が変わってきています。

理事会の省力化についてはまた別の機会に。