マンションの水道料金一括徴収は規約があっても無効の場合がある

 

「マンション管理センター通信」2014年4月号の「専有部分の水道料金を一括検針一括徴収し、その義務は特定憧憬する旨の規約が無効とされた判例」という記事。

 

8275205996_9392d49795_m photo by Wet and Messy Photography

 

著者は……

 

創価大学法科大学院教授の花房博文氏。

 

マンション関連の法律解説で、実際の判例に基づいた事例をとりあげています。

 

この事例は、競売により取得した上告人が、同マンションの管理組合を被上告人として、前区分所有者が滞納していた金額分+法定利息を、不当利得変換請求権に基づき支払を求めたという内容です。

要約すると、上告人は競落して代金を納付したので、それ以外の請求に支払義務はない、という訴えですね。

 

このマンションが給水装置ごとに水道料金を計算する原則の例外として一括の給水契約を締結し、使用量は1個のメーターで全体の使用量を検針、それを各戸で均等に使用したものとみなして料金表を適用して算出しています。

原審は、この事実関係において、滞納されていた水道料金も管理組合を通して水道局へ支払われていたというべきとして、管理組合には上告人からの利得がなく、損失がないとして、本件の不当利得返還請求を棄却、これに上告したものです。

 

こうしたトラブルの対策として、花房氏も「規約に明記」が有効かと指摘しています。

 

マンションの形態によっては、高熱水道の供給に関して、各戸に個別のメーターを設置して個別供給ができないために、当該マンションとして一括供給を受けなければならない場合があったり、また最近では、電気供給に関して、供給会社と全戸一括供給契約を結ぶことによって各戸の電気料金を安くできる場合等もあったりします。

 

管理組合としては、事前あるいは事後に各戸から各負担分を管理費として徴収できる旨や、その支払義務は特定承継人にも及ぶ旨などを規約に明記しておくことが、滞納の事態に備えた有効な方法かと考えられます。

 

ところが本件では、水道光熱費という専有部分の管理に属することを管理組合が代理している部分の問題で、共用部分等の維持・管理とは関係ないために、規約に規定しても有効性に疑問がもたれることが指摘されたわけです。

 

高裁の判決では、以下の点が指摘されました。

 

水道料金について、各区分所有者が支払うべき額や支払方法、特定承継人に対する支払義務の承継を区分所有者を構成員とする管理組合の規約をもって定めることはできず、そのようなことを定めた規約は、規約としての効力を有しないものと解すべきである。

 

つまり、そもそもこの水道料金の一括徴収関係の規約は無効だと判断されたわけです。

 

これについて高裁は、審理を尽くすように原審に差し戻しています。

 

水道光熱費は各戸検針が原則だから、管理組合が強制的に徴収するのは筋違い、それは不当利得だから無効だという訴えですが、これまでは「規約で決めていれば対抗できる」と思われていたものが、特定承継人などが絡んだ場合にちょっと面倒なことになる可能性があることが浮き彫りになったわけです。

この件で、先に支払督促などの手順が踏まれていたかどうかは不明ですが、こうした補助的な法的手続きを重ねておけば、裁判所の判断にも影響するのではないでしょうか。

 

いずれにしても、放置しておくことが事態を深刻化・悪化させる最大要因と考えられますので、随時手を打たないといけませんね。