人気上昇中という「譲渡型賃貸住宅」は逆リバースモーゲージなのかな?[ChatAET]

「譲渡型賃貸住宅」というのが話題になっているという記事。

株式会社Minoruの「家賃が実る家」では、家賃を払い続けることで持ち家が手に入るというサービスを提供。

新築住宅に賃借人として入居、一定期間家賃を払い続けると、最終的に家を買うことができる、というものらしいです。

メリットは、住宅ローンを組まずに家を購入できるというところ。

確かに、住宅購入の最大関門はローン審査で、属性によってローン審査が通らなかったり、結局はローン審査の通る金額の物件でしか選択肢がない、という状況になるのが現実です。

また、低金利が続く日本では、金融機関が住宅ローンに対して消極的で、無理して審査を通すというインセンティブがないという背景もあるようです。

さらに、フリーランスや個人事業主といった属性では、ローンすら組めないという現実もあります。

こうした状況を打開するために考えられたのが、「家賃が実る家」なのだそうです。

仕組みは、建築に先立ってその物件を対象としたクラウドファンディングを立ち上げ、出資者を募るというもの。1つの物件に対して複数の投資家が小口で出資して、住人の家賃が出資者の分配金になります。

投資のリスクとしては住人の賃料滞納が考えられますが、家賃が払えない場合は退去となり、物件は売却、その売却益が出資者に分配されます。

また、入居者が5年以内に退去する場合、違約金が生じるルールになっていて、それによって損失を補填するようになっているとか。

投資側にとってのリスク回避はしっかりしてそうですが、実際にこのサービスを使って住宅に住んでから所有できるかどうかについて、この記事では書かれてませんでした。

なので、サイトを確認。

このサービスを利用して入居する人は、まず入居期間を選び、家賃を払い続け、最初に決めた一定期間を過ぎると自分の家になる、というものらしいです。

いや、ちょっとボンヤリとした説明ですね。

メリットとして「住宅ローン不要」(→クラウドファンディングによる投資家が肩代わり)、「賃貸期間の固定資産税や建物火災保険料は大家が負担」(→大家=出資者という意味だと思います。要するに、家賃=利益から税金等=経費を引いたものが分配金となるようにしているのだと思いますが、このあたりのは契約書をしっかりと確認する必要があるでしょう)、「豊富な間取りから選べる、セミオーダーの住まい」(→新築建売を購入するのと同じ条件で賃貸できるという“ウリ”ですね)という説明が掲載されていました。

賃貸期間については、10〜25年のあいだで選べるようです。もちろん、物件の販売価格から逆算した家賃が設定されて、それをその期間に払わなければならないという縛りがあるはずなのですが、そのあたりも具体的に申し込み(審査あり)してみないと見えてこないようです。

表に出ている情報からこの「家賃が実る家」を評価してみると、「(一般的な家賃相場で)家賃を支払い続けると、契約期間終了時にその家が自分のものになる」という都合の良いイメージを抱きやすいアナウンスになっているように感じます。

クラウドファンディングを成立させるためには、かなりシビアな条件設定が必要であり、それはすなわち借り手住む側にとっては不利な条件になることを意味しています。

自分の好みでカスタマイズできるといっても、収支が合うように予算をコントロールして、最終的に決定権を持つのは出資者=大家であるわけですから、ゴージャスな調度品をそろえるのは無理かもしれません。

あと、契約期間満了で出資者=大家から土地と建物が譲渡される際の条件も確認が必要です。

本来であれば、減価償却と経年劣化分の価格下落を加味した精算時査定が必要であり、新築時の再建築価格で家賃を払い続けていることとの齟齬もあるわけです。

これは、かなり不動産リテラシーが高くないと、トラブルになりやすい事案ではないかと、書いているうちに心配になってきてしまいました。

おもしろそうなスタートアップだったとで取り上げてみたのですが、よく内容を確かめてから利用したほうがよさそうです。