中銀カプセルタワービルに学ぶ築旧マンションの管理の可能性
中銀カプセルタワービルについては、たびたびメディアでも取り上げられています。
その多くが、管理が破綻したというものだったり、建て直しすらできないという、マイナスな論調のものだと認識しています。
私も中銀さんとは管理業務でお付き合いがあったことから、このビルを訪れたことがありました。
また、不動産投資の勉強会でもこのビルのケースが俎上にあがり、公開されている情報で検証したことがあります。
確かに、楽観的な観測は許されない物件であることは確かだと思います。
そのうえで、この記事から、参考になる部分を抜き出してみたいと思います。
地上13階と11階建ての2棟の躯体には、140個のカプセルがはめ込まれ、20~25年ごとにカプセルを交換して、“新陳代謝”することで建物を残す「メタボリズム」の発想で建てられた。
それゆえの“カプセル”だったわけですが、実状は「一度も交換されず」でした。
これは、交換にかなりの費用がかかること、そうしたメンテナンスをしてまで物件の価値を維持しようとするオーナーのコンセンサスを醸成できなかったこと、などが考えられるでしょう。
費用をかけて新品同様のカプセルに変えるのと、ほかの新しい物件に買い換えることが比較検討されることを想定できなかったことが致命的ですね。
また、代官山マンションのようなヴィンテージ化に至らなかったのも、「取り替えればいい」という発想が邪魔をしたのではないかと。
記事によれば、現在では約100戸が稼働しているとか。
管理組合によって民泊も禁止され、どんどん可能性が狭まっていくなか、「保存・再生プロジェクト」が立ち上げられて、1ヵ月の短期賃貸借契約のシステムがスタートしているそうです。
ここで学べそうなのが、それぞれのオーナーが個々に動くのではなく、プロジェクトとして短期賃貸契約のビジネスを運営して、廃墟にしないという働きかけです。
そのために複数のカプセルを所有する動きも出るなど、荒廃したマンションを捨てたままにしないという事例として、この部分は注目すべきでしょう。
でも、お湯すら出ないマンションなので、企業や店舗の休憩室程度にしか利用価値がないという弱点があることもわかっていないといけませんね。
保存活動の進行状況を伝えるためにクラウドファンディングを利用した出版を行なったり、見学会を開催して理解を深める活動をしたりしている件に関しては、この物件が当初からもっているブランド力によるものが大きいので、ほかの築旧マンションが参考になるかといえば、ちょっと難しいかもしれません。
この立地とブランド力をしても、建て替えが頓挫したりしているので、やはり2〜3年でサクッと建て替えなんていうのは、夢のまた夢なのかもしれません。
しかし、いずれは建て替えしなければならない運命でも、それまでを管理によって捨てずに運営できるのであれば、中銀カプセルタワービルの事例は、やはり特殊ではなく、汎用性があるものとして、「学ぶべきは学ぶ」としたいと思います。
なお、この記事にはあまり触れられていませんが、マンションの致命的な老朽化は電気・ガス・上下水道という生活インフラが鍵を握っているということ。
まずメンテナンスと改修を考えるときには、この部分の順番と資金のかけ方を考えることが、そのあとの資金計画にも大きな影響がでてしまうから注意したいということです。