耐震診断・耐震改修の支援事業について(横浜市の場合)[マンション管理HACK]

 

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マンション管理組合の交流会で議案となった事項のシェアをしたいと思います。

 

全国的にマンションの耐震化に関する補助や支援を行政が行なうようになっています。

これには対象要件があります。たとえば、旧耐震物件であること(昭和56年月以前

の建築確認を受けている物件)、居住者が過半であること、マンション登録制度に

登録していることといった要件を満たしていることが必要になります。

 

平成23年4月からは新たなマンション段階改修促進事業が始まっています。

これは、耐震補強工事を2回に分けて行なうことができるというもの。それまでの

改修促進事業は1回で改修工事が終わらないと、保持の対象にならなかったのが、

2回で終わるものであれば対象になることに変更されました。

 

これについては、ピロティ(玄関部分の柱の少ないスペース)があるマンション

に限られるという要件が付されているようですので、確認が必要です。

 

平成23年9月からは、マンション耐震訪問相談事業も始まっています。

改修工事の計画に必要な建築士の派遣などを支援してくれるというものです。

 

耐震改修は総論賛成各論反対

 

マンションの耐震改修工事に関しては「総論賛成各論反対」であるという

現場の意見が出ていました。

一般的な意見として、耐震工事が必要なことは理解しているけれど、

自分の財産部分に補強工事等で手が入れられるのは嫌だ、というもの。

 

とくに、検査段階からサンプルのためのコンクリートを抜くような工事を

自分の部屋に関わる部分でされることに対しては拒否反応が強い

そうです。

これには、コンクリートを繰り抜かれてしまうと、自分の部屋の部分の

強度が落ちてしまうという誤解があるようです。

さらに、ピロティ部分のブレース補強などでは、駐車場スペースが減少

するなどの実害が出ることに対して異論が発せられることも多いとのこと。

 

短柱に応力が集中しないようにスリットを入れる耐震工事に対しても、

住居部への施行が生活に影響をあたえることも考えられるために、

拒否反応が出るようです。

 

実際の施行に関しても、ホコリ等の被害がでるなど、苦情に繋がる

ことが発生することも考慮しなければならないとのこと。

 

実際の補助申請については、建築基準法に則った書類を整備する

必要があるなど、かなり管理組合側の負担が大きくなることも

知っておいたほうがよいようです。

 

実例から学ぶ注意点

 

実際に耐震工事の検査などが総会に出ると、工事のことよりも

資金についての心配に話題が集中するようです。

現在は全戸に出る検査費用の補助も、非居住者には出ない時期も

あったため、全戸での同意を得るには納得してもらう必要が

あったりしたそうです。

また、全戸に補助が出るようになっても、総意に従いたくないという

一部の区分所有者がいる場合は、その人の扱いをどうするか

議論の余地があるところでしょう。

 

一部のブレースでは、特許の関係で相見積もりが取れない事情が

あり、そのために行政から「その施行は取り扱わない」という

お達しがあったりするそうです。このあたりは、窓口と内々に相談

しながら進めるしかないのかもしれません。

 

それ以前に、耐震検査をして「不可」であることが明らかになると

資産価値が減ってしまうという問題も考慮すべきでしょう。

 

これを嫌って、耐震検査はしないという判断をする管理組合も

私の周囲では多く聞かれています。

 

かといって、耐震改修をしないというのではなく、検査を公にせず、

部分的な補修などで対応するということです。ただし、これでは

行政の補助は得られませんので、その点は天秤にかける必要が

あるようです。

 

工事の相見積もりは、少なくとも3社が必要など、細かい規定も

行政のよってはあるようですので、この点に関しても、窓口で

アドバイスを受けながら進めて行かなければならないでしょう。

 

いずれにしても、補助や支援は「タダでは受けられない」という

ことを認識する必要があります。もっとも、すぐにお金が支給

されるのでは、財政的に困ってしまうわけですから、役所も

バイアスを設けるのは当然なのかもしれません。

 

こうした交渉事をサポートするために、マンション管理士を

起用することが必要になるのかもしれません。

エージェント(代理人)として国家資格を有している人が

きちんと対応していくということも、計画をスムーズに進めて

いくためには有効となるでしょう。

弁護士や行政書士などに比べれば費用も安いでしょうし、

マンション固有の事情に詳しいというメリットもあります。

また、当事者が矢面に立たないことで、トラブルを減らせる

効果も期待できるかもしれません。