読売新聞サイトのマンション管理会社への不満対応の記事がだいぶアバウトだった件

 

YOMIURI ONLINEの記事「マンション管理、不満は精査して文書に」が目に留まりました。

 

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記事では、この春にマンション管理組合の理事になった人も多いのではないかということで注目の記事ですよ、という書き出し。

そもそも……

 

「新年度」と「管理組合の年度」を混同しているところがいただけませんね。もちろん、管理会社の担当者に聞くと、なぜか4月〜翌3月という年度設定が多いようで、必然的にゴールデンウィーク明けに管理組合総会が集中することになるので、たいへんだったりするようです。

というか、あくまでも「管理組合の年度」はそのマンションに管理組合が設置された日を基準にするものですから、4月始まりに合わせることは意味がありません。

おそらくファミリー向けの多くの新築マンションが、新学期前に入居者を募集して4月からは新しい学校に子どもたちが通えるようにという配慮、いや、売り文句でスケジュールを立てたりしていることが、管理組合設立に4月が多い理由になっていたりするのかもしれませんが。

 

記事では、管理会社変更をしたある管理組合理事長の例を引用。

 

ある事業で一つの業者からしか見積もりをとっていないことがわかり、複数業者からの見積もりを要望したが、「自分たちで探して」と断られたという。年24回も点検しているエレベーターが故障したこともあって住民の不信は募り、管理会社側に文書を出したが、対応は変わらなかったという。

 

フロントとの感情的な行き違いは、マンション管理組合運営のキーポイントとも言うべき大きな問題だと思っています。

しかし、「理由の不明確な相見積もりの要求」は、管理組合側にも問題があると考えています。

 

というのは、建築関係の理事から仕入れた情報なのですが、修繕関連の施工を担当する業者はかぎられるため、横の繋がりも当然強いのだそうです。確かにそうですね。

そこで素人が摘要内容も把握せずに「相見積もりを!」と叫んでも、業者同士では第一候補があそこだったらウチは当て馬でちょっと高い値段を出しておこう、というような操作が当然のように行なわれるということです。

それは談合じゃないの、と言われればそうなのですが、素人集団の管理組合が見破るのは無理でしょうし、その労力を払う意味があるのかという問題にもなります。

 

確かに「言いなり値段」というのはどうかと思いますので、私の関係している管理組合では摘要の内容をチェックして、少しダブっていたりしているものをまとめられないか、人工や行程の一部を説明してもらって減らせないかという相談を、直接業者にします。そうすると勉強してくれるんですね。

何度か経験したので記しておきたいのですが、「相見積もり」は結局は施工内容を比較するのではなく値段の安い業者への誘導にしかなりませんので、施工結果が心配になります。実際に、安いと思って乗り換えたら、ひどい目にあったことが数回あります。懲りました。

 

以降、「相見積もり」よりも、「施工監理」がきちんとできるかのほうが重要であるという認識で、役員にもその旨を理解してもらえるように、業者からの説明を求めたりしています。「施工監理」がちゃんとしてそうであれば、ちょっと高い見積もりでも安心度が違います。

安物買いの銭失い、なんですね。

 

エレベーターの件も、定期保守の内容と故障の因果関係が微妙なので、「だから管理会社が信用できない」とは言い切れないものがあります。

 

上記2点は、フロント氏がどういう報告をしたかで大きく変わった可能性があるようにも感じます。

それはつまり、この記事のようなマスコミがあおって、「管理組合は管理会社にだまされている」という論調で注目を浴びようとしていることが大きな原因になっていると思います。

 

「実際にだましている管理会社がいるだろうが!」

はい、それはその事実を伝えればいいわけで、「だましありき」で管理会社と対峙しなさいといわんばかりの論調がまかりとおっていると、それに乗せられた組合員がやたらに文句ばかり言って、総会も理事会も紛糾して、みんなどんどん管理組合への興味を失うという「負のスパイラル」に陥るしかないので、避けなければいけません。

記事では、「管理会社とは上手に付き合い、要望を伝えていくよう心がけましょう」と結んでいますが、「まず疑え」の方法を誤ると、上手に付き合うことも、要望をうまく伝えることもできなくなります。

 

「フロント替えろ!」「管理会社変えるぞ!」という交渉は、間違えると脅しになりますし、相手が契約内容を逸脱していなければ、管理会社変更後も同じような問題が発生することは明らかです。

 

契約内容を確認し、適法で契約を遵守しているかのチェックを優先し、もし問題が明確になればその証拠を確保し、ビジネス的に相手と解決策を話し合うのが大人のやりかたでしょう。

子どもの喧嘩のように、買った負けたにこだわって相手をねじ伏せようとする役員も多いように感じます。でも、管理会社を変更して勝ったつもりでも、問題は解決せずに先送りになっていれば、その労力だけ損していることになります。振り込み口座の変更など、組合員にも負担が発生します。

 

新規受注の際には、甘言が多くなります。しかし、管理会社の業務は関係法令に守られています。つまり、やらなくていいことはやらない。やりたくても「法令上できません」と断わることができる、などなど。それほど会社によってサービス内容が変わらない、変えようがないわけです。損害保険会社のマンション保険が横並びなのを考えていただければ想像がつくのではないでしょうか。

 

それだけに、実際に窓口となるフロント氏とどう付き合うか。怒鳴り合って、相手を服従させようとスタンスからは、いい関係など生まれるはずがないという常識的なところから考え始めるべきだと思います。

 

もちろん、やるべき仕事をやらない怠惰なフロント氏は論外です。それはマンション管理の問題ではなく、契約不履行の問題になりますから。

 

 

マンション管理、不満は精査して文書に : ホームガイド : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

 

 

 

マンション管理、不満は精査して文書に

この春、新しくマンション管理組合の理事になった人もいるだろう。

管理会社への対応も、理事の役割のひとつ。住民から管理会社への不満の声が出たら、よく精査し、要望すべきことはきちんと伝えていくことが必要だ。

横浜市港北区のマンションの管理組合は今年3月、管理会社を変えた。理事長の男性(43)は「前の管理会社に対する不信感がきっかけでした」と話す。

ある事業で一つの業者からしか見積もりをとっていないことがわかり、複数業者からの見積もりを要望したが、「自分たちで探して」と断られたという。年24回も点検しているエレベーターが故障したこともあって住民の不信は募り、管理会社側に文書を出したが、対応は変わらなかったという。

管理会社の変更は最終手段だ。新旧会社の引き継ぎが悪いと、サービスが低下するリスクも伴う。まずは管理会社の仕事ぶりをチェックし、改善を求めることが大事。お金については、管理会社が出す予算原案に黙って押印するのではなく、このマンションのように審査したい。

マンション管理組合の会計に詳しい公認会計士の深野一朗さんは、「各項目について、どの業者にいくらで発注するのか、複数業者から見積もりをとったかなど、管理会社からよく聴取しましょう」と話す。また、「雑費」の項目があるようなら、使途不明金が紛れ込みやすいので、詳細に中身を聞く。公認会計士に会計監査を頼むのも手だ。

一方、「掃除が雑」といった不満なら、まず契約内容を確認する。管理会社と管理組合との契約である「管理委託契約書」とその細則「業務仕様書」では、「階段のはきふき週1回」など、細かいサービス内容まで取り決めている。契約不履行なら、管理人や管理会社側の窓口であるフロント担当者に指摘する。

マンション管理士の日下部理絵さんは、「問題があった時、管理人やフロント担当者の交代を求めるのも有効です。人を替えただけで解決した例がたくさんあります」と話す。

それでも改善しなければ、住民から募った不満点を理事会でまとめ、管理会社本体に文書で提出する。その際は「3か月以内に」などと改善期限を示さないと、改善されたかどうかが、うやむやになる恐れがある。また、「改善されなければ、管理会社を変えることもある」と、提出の際に伝えるのも効果的だ。

ただし、要望は過大にならないよう注意。知り合いが住むマンションの管理と比較したり、マンション管理士にサービス内容と管理委託費が釣り合っているかを客観的に見てもらったりして、妥当な要望かどうかを知ることも大事だ。

日下部さんは、よくマンション理事から管理に関する不満を聞くが、その不満を管理会社側に伝えていない人が意外に多いそうだ。「管理会社とは上手に付き合い、要望を伝えていくよう心がけましょう」と日下部さんは話している。

引用:YOMIURI ONLINE 2014年06月02日