マンション管理組合の監事が行なう監査の手順について #マンション管理
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管理組合の監事に任命されたときにやらなければならない監査の手順について…
まとめておきます。
●時期
通常総会に監査を済ませた旨を報告しなければならないため、総会開催に間に合うように監査を実施する必要があります。
総会開催期日の決定とも関係しますので、理事長と事前に協議して監査のスケジュールを決めます。
●内容
管理組合のお金の出し入れが、収支予算に基づいて適正に行なわれているかを確認するのが、監査の主な目的です。
チェックするのは「収支報告書」と「貸借対照表」です。
「収支報告書」
1. 会計区分ごと(管理費会計、修繕積立金会計等)に作成されているか。
2. 対象の会計期間が表示されているか。
3. 収支予算と実績が対応しているか。
4. 会計期間内の収支がすべて計上されているか。
5. 収支予算と実績に差額が生じていないか、差額が生じた理由はなにか。
6. 支出項目について請求書、領収書、契約書等の証憑と照合等。
※管理会社がしっかりしていれば、月次で収支報告書が領収書などの綴じ込みとともにまとめられて、一覧しやすくなっていると思います。これぐらいの整理は委託の範囲なので、管理会社に努力してもらうようにお願いしましょう。
「貸借対照表」
1. 会計区分ごと(管理費会計、修繕積立金会計等)に作成されているか。
2. 会計期末日現在となっているか。
3. 貸方、借方の合計数値が一致しているか。
4. 管理費等保管口座等の預金残高が金融機関発行の残高証明書と一致しているか。
5. 未収金、未払金等が正しく計上され内訳明細と一致しているか。
6. 現金勘定の残高と実際の有り高を照合する。
7. 預金通帳、保険証券等の現物確認と名義人の確認等。
※こちらのチェックはほぼ転記がきちんとされているかを見るだけです。問題になるのは未収金の計上あたりなので、これを重点的にチェックしたほうがいいでしょう。
●疑問
基本的に、支払っているお金はちゃんと請求書が出ているか、その金額と記載数字が同じか、という以外に、書類で会計がチェックできることはないと言えます。
簿記の知識がないとチンプンカンプンなのではないかという心配もありますが、合計金額のチェックや仕訳がちゃんとされているか等の作業は監事の職務範囲ではありませんので、あまり神経質にならないで、「収支報告書」と「貸借対照表」に記されている数字に元となる証憑があるか、その数字が同じかを確かめて、「帳簿がちゃんと作成されていることを確認」するのが監事の職務であることを忘れないようにしましょう。
もちろん、数字が合わなかったり、前期総会で決議されていないような大きな支出があった場合は、管理会社担当者や理事長に問い合わせをしなければなりません。
その際に心がけたいのは、鬼の首を取ったような態度をとらないことです。
あくまでも数字をチェックしていて、数字が合わないと自分の作業が終わらないから協力してほしいというスタンスでいたいものです。
監査は管理組合の職務のなかでも重要度の高いものなので、協力してもらうのは「当たり前」なのですが、「当たり前」であるからこそスムーズに解決する必要があり、無用な対立を生んで監査機関が伸びてしまうのを防がなければなりません。
なお、標準管理規約には「管理組合の業務の執行及び財産の状況について不正があると認めるときは、臨時総会を招集することができる」規定しています。
それほどの権利を与えるだけの重要な職務だということですが、管理組合の動きが把握できるポジションでもあるので、機会を与えられるようであればぜひ率先して引き受けてみてください。
ちなみに、私が約100戸のマンション管理組合の監査をするのに必要だった時間は約6時間。連続して時間がとれないスケジュールであれば、2時間ずつ3~4日かかるという前提でスケジュールを立てておいたほうがいいでしょう。
引用・参考資料:「管理組合会計に関する相談事例から」財)マンション管理センター管理情報部次長 原昇|「マンション管理センター通信」2013年2月号