マンションの空室を高齢者住宅へと厚労省が動き出しています #マンション管理

住宅新報の記事に「空室を高齢者向け住宅に 厚労省 低所得者対象に検討 「サ高住」よりもハードル低く」というのがありました。

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空室を高齢者向け住宅に 厚労省 低所得者対象に検討 「サ高住」よりもハードル低く – 住宅新報web | 行政・団体

空室が増えて困るのは、賃貸人だけではありません。

そのエリアがゴースト化し、スラムになるのを恐れる行政も同じです。

ということで、厚労省が「それを活用できないか」という動きをみせているというのが、記事の導入です。

住宅問題なので、なぜ国交省が動いたのではないのかと疑問に思う人もいるのではないでしょうか。

ということはつまり、住宅問題としてクローズアップするのではなく、福祉の問題としてマンションを管理したいという厚労省の動きが出てきているということになります。

記事では後半に安否確認などの必要や、事故(室内で死亡)があったときのリスクなどをあげていますが、こうしたリスクは高齢者住宅に限ったことではないわけですから、まったく議論が進んでいないことがうかがわれます。

生活保護を受け入れる住宅で発生している問題を考えると、これもまた仲介業者の食い物にされるのではという心配が頭をもたげてきてしまいます。

空室を高齢者向け住宅に 厚労省 低所得者対象に検討 「サ高住」よりもハードル低く

 賃貸住宅の空室は年々拡大している。その改善を図ろうと、入居者確保へ向けた取り組みは見られているが、「高齢入居者」を敬遠する風潮は依然として残っている。国主導の政策で、「空室改善」と「高齢者の居住確保」の2つを実現しようとする動きもあるが、複雑な心境を語るオーナー、不動産会社がいるのも事実だ。

 厚生労働省は低所得の高齢者向け住宅「高齢者ハウス(仮称)」を供給するための検討を始めた。7月上旬に、事業化に向けた論点などを話し合う有識者会議の第1回会合を開いた。

 低所得でも入居できる住宅を整備するため、既存賃貸住宅の空き家活用や、老朽化したアパートを高齢者向けに改修することなどを想定している。

 対象とする高齢者の所得水準、バリアフリー化など改修工事に対する補助金の在り方、高齢者が入居することに対するオーナーの不安解消策などについて議論を重ね、13年度末にも報告書をまとめる。

 サービス付き高齢者向け住宅との違いについて、同省老健局高齢者支援課の山口義敬高齢者居住福祉専門官はこう説明する。

 「サ高住は床面積や設備などについての基準が設けられているが、低家賃が前提となる高齢者ハウスの場合、ハードルは低くせざるを得ない。といって、法的に何でもいいというわけにもいかない」

 オーナーや、管理する不動産会社の不安解消策としては、入居する高齢者の見守りをしたり、生活相談などに応じる「生活支援員(仮称)」を巡回させることを検討する。 厚労省としては、オーナーや不動産会社の事業リスクをなるべく少なくすることで、空き家の提供を促したい考え。入居する高齢者への介護サービスは、訪問介護など在宅ケアを基本とする。

 厚労省は、今後一人暮らしの高齢者が増えると、サ高住や特別養護老人ホームなどに入居できない低所得高齢者の住宅問題が深刻化すると見ている。

 そこで、全国に増加しつつある空き家を活用し、家賃を抑えた住宅を供給できないか、というのが本来の趣旨。地域密着の不動産業界としては、このような政策を積極的に評価し、ビジネスチャンスにつなげていくべきではないだろうか。

国交省、補助事業推進中

 一方、国交省は既に民間住宅を活用した住宅セーフティネット整備推進事業を進めている。国庫補助事業として、高齢者世帯や子育て世帯など「住宅確保要配慮者」の入居を前提としたものだ。

 住宅確保要配慮者向けに賃貸住宅の改修工事を行う賃貸人などに補助金を出している。改修工事後の最初の入居者を住宅確保要配慮者にすること、災害時においては被災者が利用できるようにすることなどが条件だ。耐震改修工事、バリアフリー改修工事、省エネルギー改修工事費が対象。補助額は改修工事費用の3分の1、1戸当たり100万円が上限。

 13年度は4月10日から申請受け付けを開始しており、8月16日現在、交付決定件数1670件、交付決定金額は24.3億円となっている。

 これについて国交省住宅局安心居住推進課は、「昨年度よりも申請受付のスタートが早かったこともあり、申請件数が増加している。5月に全国7カ所で、制度の説明会を開催した。賃貸オーナー、賃貸管理業者、施工会社など多くの人が参加し、認知度も高くなっている」と今後更に、申請ペースが上がることに期待感を示した。

 13年度の受け付けは12月27日までとなる。

地域業者の声 「オーナー、依然として敬遠」 〝孤独死リスク〟を警戒

 単身高齢者の新規入居状況について都内で地域業者に聞いたところ、「直近にかけて増えている」との答えが一様に返ってきた。

 高齢化の進展という社会情勢はさることながら、消費増税や相続税対策としての新規建設が、従前の物件を取り壊したうえで進んでいることも背景にあるようだ。江戸川区の業者は、「古い物件の入居者は高齢者が多い。立ち退かざるを得ない状況に陥っている」と証言する。

 増加傾向にある単身高齢者の転居だが、一方のオーナー側には受け入れに懸念を示す向きが根強い。最大の理由は、やはり孤独死のリスクだ。「(単身高齢者の)入居を斡旋するものの、70歳以上の場合は断られてしまう」、「こちらで元気な方かどうか見極めたうえでも、承諾が得にくい。『長期間空きがある状態よりいい』と説得するのだが…」といった声が聞かれる。

遺品整理に懸念示す

 つい最近、「78歳の単身女性の入居契約が済んだばかり」という新宿区の業者。「孤独死してしまった場合、遺品を整理する人間がきちんといるかどうか。心配はその一点に尽きる」と、オーナーの心情を代弁する。実際に前述の単身女性の例では、当初オーナーとの交渉が難航。女性に子どもがいなかったためだ。そこで〝何かあった時〟を考慮し、女性の甥に当たる男性の許可を得てその連絡先を伝えるなど話し合いを重ねた結果、ようやく承諾にこぎ着けたという。

 孤独死後の明け渡しに関しては、江戸川区が〝単身世帯等室内清掃事業〟を今年3月まで実施していた。原則として親族のいない、生活保護を受給する単身者が亡くなった場合、残置物の処理に掛かる費用を区が全額負担する制度だ。同区によると、17~18万円程度が処分費用の平均だという。87年から継続してきた同制度だが、「財政的に黄信号。他の自治体と比較して、手厚い内容の事業を見直す必要があった」(同区)ことから、12年度を最後に終了。生活保護受給世帯について、区の福祉事務所からオーナーへ家賃を直接振り込む代理納付制度が、民間賃貸住宅で浸透してきたことも踏まえた判断だという。

 これに対して同区内の業者からは、「孤独死に伴う持ち出しリスクがなくなるため、単身高齢者の入居をオーナーに推す際に有効だった」など、廃止を惜しむ声が上がっている。

 〝最期のフォロー〟を、行政にどこまで期待できるかは難しいところ。ただもちろん、単身高齢者の入居リスクを、孤独死のみが占めているわけではない。入居中の生活支援を重視する意見もある。「痴呆の症状が表れた時、一番怖いのは火の不始末。(巡回サービスなどによって)それが防げるならありがたい」(江戸川区の業者)。また、「ヘルパーの訪問が定期的にあるのでむしろ安心」と、要介護者の入居を前向きに捉える声も聞かれた。

 移転せざるを得ない事情を抱える単身高齢者と、空室増に悩むオーナー。その間に横たわるギャップを少しでも埋める策が、望まれている。

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