長期修繕計画書について考える

マンション管理で私が重要だと思っているのが、適切な長期修繕計画書の作成と管理です。

理事のなり手もいて、なんとか管理組合運営が進められる管理組合であっても、理事会で話し合われるのは本年度の事業計画、ということが多いでしょう。なかなか数年後のことまで考えが及ばないのです。

築年数が浅ければ、修繕などの問題はあまり起こりませんから、突発的に発生したことにその時その時対処すれば解決できます。

しかし、築旧になると、突発的なトラブルが次々に発生するようになり、とても「突発的」などとは呼べなくなる状態になりやすいのです。

私が関係している管理組合は築30年以上が多いのですが、1カ月ごとの理事会で、毎回新たな修繕関係の議案が上程され、対応が追いつかなくなることもしばしばです。

いま、この管理組合では、長期修繕計画書を作成しようとしています。

簡単に言ってしまえば、10年20年のスパンで、どうやって修繕をしながら維持やバリューアップをしていくかの「スケジュール表」です。

まずは、国交省が策定している「長期修繕計画作成ガイドライン」を参照してください。

報道発表資料:長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン及び同コメントについて – 国土交通省
 マンションの快適な居住環境を確保し、資産価値の維持・向上を図るためには、建物の経年劣化に対応した適時適切な修繕工事を行うことが重要です。そのためには、適切な長期修繕計画を作成し、それに基づいた修繕積立金の額の設定を行うことが不可欠です。  しかし、長期修繕計画をどのような様式により作成するのかは、これまで定まったものはありませんでした。  そのため、国土交通省は、平成19年9月に「長期修繕計画あ …

補足ポイントをまとめておきます。

●長期修繕計画書とは、一般的には、A3サイズの用紙に新築は30年、築旧は25年の各年度に、修繕の項目と概算の予算を書きいれたものを指している。

●数年(5年程度)で見直しを行なうことを国交省では進めているが、これは決して帳尻を合わせるために行なうものではないという認識をもっておくべき。

●“計画書”の名のとおり、これを元に計画修繕の実行へと落とし込んでいくことが必要。つまり、表を作れば終わり、ではない。

●計画書には、各部仕様、修繕仕様、修繕履歴に分けて記載する。

ex. 長期修繕計画の構成

●大規模修繕の後に見直すことがベター。

大規模修繕の際に使用した簡易的な報告書は、工事の仕様書と同じ。

従って、大規模修繕の内訳書をそのまま長期修繕計画書の土台とすることが可能。

また、竣工時の長期修繕計画になかった項目が大規模修繕で追加されていれば、当然長期修繕計画書の見直しのときに反映しなければならない。

外部に長期修繕計画書を依頼する際は大規模修繕の後が最適。

●耐震診断は大規模修繕計画とは別のものである。

耐震補修は長期修繕計画には入っていない。

実施する場合は大規模修繕実施にも影響が及ぶことを配慮しなければならない。

計画と実施で金額に差が出やすいために切り離して作成することが望ましい。

⇒“総論賛成各論反対”になりがちなので…

●「推定修繕工事費内訳書」があれば見直しはできる。

しかし、通常は作成していない(できない)。

⇒大規模修繕内訳書を流用して作成可能。

●12年周期の大規模修繕で作成した長期修繕計画書が収支赤字なので15年にして黒字化させた⇒見直しとは言えない。

●「マンション購入予定者や管理組合が内容の理解・チェックを用意に行なうことができる」ことが必要。⇒だから紙1枚だけでは不十分。

●長期修繕計画表は長期修繕計画のエッセンスにすぎない。

●長期修繕計画は「数字に合わせる」のではなく「数字の中身を精査して見直す」ことが大切。

●数字よりも大切なのは施工業者の選定。⇒実はこれがいちばん難題。

行政認可の業者から公募する方法。

メーカーからの推薦。

●「誰が作成したのか」によって見直す視点が変わる。