マンションの管理費滞納問題は「保証ビジネス」で救われるだろうか?

 

2691619270_dc42301f6e_m July 21 by cavale

 

最近、目にするようになったのが、マンション管理費を保証しますという広告。

 

新手法「保証ビジネス」 管理費滞納リスクを回避する|zakzak by 夕刊フジでは、「必ずと言っていいほど管理費その他を滞納する区分所有者が現われる。実に困った問題だ」として、管理組合の苦労を並べ、この問題を取り上げています。

滞納への対処の最終手段は競売ですが、「裁判の手続きは面倒だし、経費も掛かる。訴訟の当事者になりたがらない理事長も多い」との指摘は私の実感にも近いですね。

いちばん面倒なのは、総会にはかって決議をとらなければならないなどの手続きに関することでしょう。

これに対して「マンション管理費保証」とでも呼ぶべき業態が生まれていることを紹介しています。

ここで取り上げているのは某業者のもので、まず基本料金2万5,000円を支払い、その後はそのマンションの管理費・修繕積立金総額の2%を毎月納めるというもの。これが手数料となり、保証会社が管理組合に管理費・修繕積立金を納めるというシステム。滞納があっても、保証会社が管理組合に代位弁済し、保証会社によって滞納者から債務を回収するというわけです。

 

記事でも指摘されているが、賃貸マンションでは賃貸借契約の際に旧来の保証人のほかに保証会社が入ることが多くなっています。これは区分所有者と保証会社のあいだでの契約となりますが、これを管理組合と保証会社のあいだで契約するものが管理組合費の保証ビジネスということです。

 

2年前にマンション管理費保証会社からの営業メールが!

実は、2年ほど前のある日、1通のメールが届きました。

そこには「どこかで、協業が可能かと存じます。ご迷惑でなければ、商品や導入方法のご案内にお邪魔したく、ご連絡を頂戴できれば、と存じます。」と記してあり、私のブログを読んで連絡を取ってきたようでした。

早速、その会社のサイトにアクセスして概要を調べ、疑問に感じた部分を返信してみました。

それに対して丁寧な説明が返ってきました。

質問したのは3点。以下にその内容を要約して掲載します。

1)御社と滞納保証をした際に支払う金額は?

→共用部駐車場・駐輪場使用料やインターネットCATVの基本料金等も含めて「管理費等債務」を保証するという内容なので、手数料は保証対象額の5%となり、1戸あたり15,000円/月で100戸のマンションであれば75,000円になる。

2)保証機構制度による保証は受けられない?

→弊社はマンション管理業者ではなく、業者登録もしていない。従って協会保証機構の制度の枠外にあるので保証機構制度には関係しない。

3)管理会社との連携や免責については?

→マンション管理会社とは「広く協業」というスタンスで、管理組合の紹介を管理会社にお願いしている。未収金に悩んでいる管理組合を紹介してもらうというビジネスモデルであり、弊社スキームに賛同してもらえれば管理会社との代理店契約等もある。

未払いの管理費等が発生した場合には、回収に際して(連絡先等の情報などで)管理会社のサポートが必要になる。管理会社に回収の責務がない部分を補うのがこのビジネスの目的。

以上が回答の要約です。

 

2)については少し専門的にになりますが、管理費等の徴収業務を請け負っているマンション管理会社については、業務の登録の義務があり、1ヵ月分以上の預かり金を保有しないという制限を設けたうえで、1ヵ月分に相当する金額を担保として指定機関に預ける必要があります。これは、もし倒産などによって管理組合から預かった管理費等が口座凍結などによって引き出せない際に保証するものです。

しかし、「マンション管理費保証」のビジネスはマンション管理業者の範囲外になるので、この制約の適用を受けないということになります。

この点は、管理組合の資金が一時的にこの保証会社の口座に置かれることを考えるととても危険であると考えていましたので、解決できなかったことは残念でした。

 

管理費滞納保証のスキームはお得なのか?

こちらから提示した例では、100戸のマンションで徴収する管理費等が1戸あたり15,000円/月であるケースを考えてみました。

年間の管理費等の総額 100×15,000×12ヵ月=18,000,000
年間の支払手数料 18,000,000×0.05(手数料5%)=900,000

 

これとなにを比較すればいいのかといえば、滞納が発生したときにどのぐらいの費用が掛かるのかということをどう想定するかで異なります。

私は1年というスパンで滞納が1戸発生した場合を想定し、その金額について弁護士に対処を依頼した場合で計算してみることにしました。

滞納(1戸)の年間総額 15,000×12ヵ月=180,000
弁護士依頼費用 10,000円(着手金)+180,000×0.35(成功報酬35%)=73,000

 

弁護士に滞納処理を依頼するには多少の手間がかかります。そういう手間や面倒を一切引き受けてくれるのが「マンション管理費保証」ということになります。

年間で90万円の固定費を供出できるように定期総会に上程するか、滞納が起きたときに弁護士への依頼を議案で決議して73,000円で済ませるか……。

個人的な意見では、起きていない滞納のために年間百万円近くの掛け捨て保険を総会に上程して賛意を得るのはちょっと難しいかな、と。

すでに滞納が起きている場合にも、ピンポイントで弁護士対応に移行するほうがかなり安上がりです。その代わり、事務手続きなどの手間はかかりますが。

いちばんのネックは、滞納を起こしていない区分所有者が「滞納保証」の名目で負担を強いられる部分ではないでしょうか。

ただし、弁護士に滞納処理を依頼する際には、滞納金によっては引き受けてもらえないケースもあるようです。実際に私が依頼したケースでは、「この滞納金額では少ないので、もうちょっとようすをみましょう」と言われたことがあります。弁護士もビジネスなので、成功報酬額が経費的に見合わなければ取り扱いを渋ることもあるということです。その際には、司法書士に依頼するという手もありますが、司法書士は140万円を超える民事事件の和解・代理を行なうことができないので、注意が必要です。

 

なお、手数料が2〜3.8%というマンション管理費保証会社も出てきているようです。いずれにしても、シミュレーションをしたうえで、管理組合総会に上程できる資料と根拠をそろえてから導入するようにしたいものです。