マンション敷地内の無断駐輪への対処で注意すべきこととは?
コロナ禍で新しい生活様式が叫ばれるなか、自転車の需要が高まっているというニュースを目にしました。
確かに、通勤電車の密を避けたり、スーパーでの多めの買い物の帰り道を楽にしてくれたりと、活躍の場が広がっていることは想像に難くありません。
マンションと自転車の関係
分譲マンションでは、一般に居住者に向けて駐輪場を設けて、指定された場所以外に置かないことが求められます。
駐輪場の利用については、利用料(管理料)が徴収されることも多いと思います。
廊下や玄関などに置くケースもあるようですが、基本的に居住者=所有者及び所有者に認められた居住者(賃借人など)がマンションの敷地内で自由に使用できるのは、専有部分だけ。
つまり、廊下や玄関などの共有部に私物を勝手に置くことはできないのです。
ですから、やる気のある管理会社の担当者なら、巡回したりほかの居住者からの指摘を受けたら、該当する自転車の持ち主に対して、(区分所有法に基づく管理規約に違反していることを理由に)共有部に私物を勝手に置けないことを説明して、決められた駐輪場への移動「と契約)ないしは処分を求めてくれるでしょう。
居住者以外の駐輪について
居住者であれば自転車の所有者も特定しやすく、法律に基づいた説明をして理解を得られやすいものと思います。
しかし、マンションの敷地内に無断で駐輪する人が、居住者とは限りません。
私がマンション管理士として経験した例では、
- 塾や教室を開催している(らしい)部屋に出入りする人たちが乗ってきた自転車を停める。
- 子どものたまり場になっている部屋に集まる子たちが停める。
- 事務所づかいをしている部屋の通勤者や仕事先の人が停める。
といった案件が発生して、対応を余儀なくされました。
駐輪の法的な解釈
このような事案はかたちは違えどもどこのマンションでも起きることでしょう。
法律ネタのニュースを配信している「弁護士ドットコム」でも、この話題を扱っていました。
私も解決を期待して読んだのですが、残念ながら中途半端な回答だと言わざるを得ませんでした。
この記事では、「登録のない自転車の駐輪を禁じて」いるので、「一週間以内に移動しない場合、管理者の権限に基づき撤去します」といった内容の警告文を該当の自転車に貼ったのちに処分することの法的な問題点を解説。
そして、法的な問題に発展させない対処法として、次の内容を掲げています。
その自転車が居住者(及びその関係者)のものではないか、回覧等で周知し、持ち主を探します。また自転車置き場内等に、貼り紙等で所有者に処分を促してください。
そのうえで、居住者(及びその関係者)のものでなく、所有者が判明しない場合には、警察に遺失物として届けを行い、民法240条により、管理組合が放置自転車の所有権を取得して処分することになります。
民法240条では、『遺失物は、遺失法の定めるところに従い公告をした後三箇月以内にその所有者が判明しないときは、これを拾得した者がその所有権を取得する』とされています。 また、手段を尽くしても所有者が見つからなかった場合に、自転車の所有権が放棄されているとして、民法239条の無主物先占(所有者のない物を最初に占有した者が所有権を取得すること)が成立し、管理組合が所有権を取得して処分するということも考えられます。
民法239条では、『所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する』とされています。 しかし、盗難自転車の場合には所有権が放棄されているとは言えません。処分後に紛争になる可能性がありますから、この方法はお勧めできません。
https://www.bengo4.com/c_1009/n_8142/
では、管理組合に所有権が移ったとして、自由に処分できるかといえば、そうではないのです。
勝手に表の道路に放り出したりすれば、「自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐車対策の総合的推進に関する法律や地方公共団体の条例に反する可能性」があるとのこと。
まとめ
私が関係した事案では、理事のひとりが何度も管轄の警察に足を運んで、頼み込んだりしていました。
しかし、“何度も”でもわかるように、警察はこのような事案に介入してくれません。
道路に自転車を移動して、自治体の駐輪禁止のステッカーを貼るという強攻策に出た管理組合も見ました。
多少の効果はあったものの、抜本的な解決に至らなかったのはいうまでもありません。また、先述のように、逆に訴えられかねない行為であることにも注意が必要でしょう。
こうした事例から学んだのは、ポスティングによる「お願い文」などで遠回りであっても該当者とのコミュニケーションを図ることの重要性です。
管理組合がマンションの管理に積極的で、環境改善の努力と監視をしているというメッセージを伝えることが、効果があったということをシェアしたいと思います。