分譲マンションの不明所有者問題の拡大に管理組合はどう対応すればいいのか

 

分譲マンションで、所有者が不明の物件が増えているという話題がネットの記事になっていました。

 

分譲マンション、所有者不明物件が急増…管理費等を徴収できず建物全体が劣化

 

このニュース・ソースは、「所有者不明土地問題研究会」という団体が2017年12月13日に取りまとめた最終報告をもとにしたもの。

これによれば、登記情報で所有者が判明しないだけでなく、判明しても連絡が付かないという困った土地を「所有者不明土地」と定義。

地籍調査をもとに2016年の「所有者不明土地」を類推した結果、九州全体の面積を超える410万ヘクタールもあることがわかったとのこと。

さらに、「2040年には896市町村が消滅可能性歳であること」「2013年の空き家850万戸が2033年には2150万戸になること」「相続候補者へのアンケートで今後に発生する土地相続のうちの約27〜29%が未登記になる可能性があること」「高齢化で志望者数が年間160万人を超えること」を前提に、「所有者不明土地」が約310万ヘクタールも発生すると試算しています。

合わせると、北海道に匹敵する面積になるというから、深刻です。

さらに、この問題がもたらす経済損失は2016年で約1800億円、2040年までの累積で6兆円規模になるとしています。

 

この試算は土地に関するものですが、分譲マンションについても対岸の火事とは言っていられません。

土地の権利の放置は、その資産価値がないことによるものがもっとも大きと言えますが、築年数が経過することで老朽化した分譲マンションでも同じことが発生するわけです。

この件に関して、国土交通省では2016年に調査を行ない、管理組合を組織すべき所有者に関して「連絡先不通または所在者不明者」が13.6%の割合(回答数639件のうち87件)で存在するという結果を公表しています。

この「連絡先不通または所在者不明者」が発生することで問題となるのは、管理費・修繕積立金等の管理組合運営に必要な原資が徴収できなくなることです。

さらに、建て替え決議など重要な議決に関しても、「連絡先不通または所在者不明者」が必要な分母数以上になった場合には、総会すら開催できない事態が想定されるわけです。

こうした危機意識をもっている管理組合は少なくなく、前述の調査でも71.4%の回答率で不安を感じている管理組合があるという結果が出ています。

 

では、管理組合はこうした「連絡先不通または所在者不明者」について、指をくわえてみているだけしかないのでしょうか?

これに対して、分譲マンションの管理組合では、「不在者財産管理制度」や、相続放棄された場合の「相続財産管理制度」を利用することが出来ます。

もちろん、それぞれタダでできるようなラクな制度ではありません。

しかし、「他人の相続問題にクビを突っ込めない」「不明の所有者を見つけるのは面倒くさい」と諦めてしまっては、自分の試算であるマンションの価値を黙って毀損していくままにするだけです。

可能な手段を講じて、各所と連携&相談しながらでも、問題意識をもって対処していくべきだと思います。

 

「不在者財産管理制度・相続財産管理制度の円滑な活用」については、以下のPDFを参考にされるといいと思います。

まちづくりにおける不在者等財産管理制度の活用について(都市研究センター主任研究員・吉田 英一)