マンション管理組合でも“相続対策”を立てておく必要がありそうです
「土地相続、登記されず塩漬け 相続人特定に膨大なコスト」というニュースを読みました(朝日新聞デジタル/2017年8月19日付け)。
※新聞サイトの記事はリンク切れになりやすいので、リンクを貼りませんが、ご容赦ください。
この記事では、相続登記されないといった理由で、所有者不明の土地が増えていることを取り上げています。
所有者不明土地問題研究会という有識者による集まりがこの問題を研究しているそうです。
元総務大臣の増田寛也氏が座長を務めているようなので、国としても放置できない問題と考えているのではないでしょうか。
なぜ所有者不明の土地が増えるのか?
記事では、すでに国内で九州よりも広い約410万ヘクタールの土地が、所有者不明となっている現状があるとしています。
この問題の根底には、「不動産登記の落とし穴」があるようです。
どこに落とし穴があるかと言えば、登記は義務ではない部分。
つまり、被相続人の死亡によって相続が発生しても、その相続対象である不動産などの移転登記は、相続手続き上で必要がないかぎり、「しなければならない」と言うことではないのです。
この背景には、不動産の資産価値の下落が関係しています。
相続をして移転登記をしてしまうと、その管理や税金といったコストを背負わなければならなくなります。
収益があったり、利用価値のある不動産であれば、こうしたコスト負担も苦になりませんが、なんの価値もない、手入れをするだけ無駄に思われるような荒れ地だと、わざわざ費用を掛けて自分のものにしたくない、と思うのは無理もありません。
要するに、知らんぷりしておけば、こうしたコスト負担から逃れられるので、放置が進んでしまったわけです。
分譲マンションにも“相続放置”が発生する?
記事では土地を取り上げていましたが、この問題は分譲マンションでも発生する可能性があります。
特に、相続の対象となるような築古のマンションでは、相続人が自分で住むためにはリフォームやクリーニングが必要となるなど、さらにコスト負担が増えることも。
わざわざ引っ越して住みたいと思えるような物件ではないかぎり、金食い虫の相続を自分から選ぶ人がいない状況というのもむべなるかなでしょう。
この問題は、国の税収が減るとか、管理者(責任者)不在の不動産が増えるといった、行政レベルの問題増加ももちろんありますが、マンション管理組合の運営上でも深刻な問題を引き起こす可能性があるのです。
マンション管理組合における“相続放置”の問題点
マンション内でこの相続放置が発生してしまうと、管理費・修繕積立金の請求先が不明になってしまいます。
本来は相続人を特定して、相続していようがいまいが、請求をすればいいわけですが、相手はそうしたお荷物を背負いたくないので相続手続きをしていないわけなので、これに応じてくれる可能性も低いのです。
また、相続人の特定と請求についても、管理会社の業務内では処理できない案件となるため、個人情報にアクセスできる弁護士などへの依頼が必要になります。
弁護士に依頼すれば、費用も掛かります。
こうした手間と費用を掛けてまで、管理組合が相続人を追っていくのは、かなり負担が大きいと言えます。
私が関係しているマンション管理組合でも、この問題が発生していて、他人事ではなくなっています。
現在は最小限の費用で請求権だけ押さえておくため、相続人の特定と連絡(債務の請求)を管理会社と弁護士に依頼しています。
まとめ
日本は今後、急激に人口が減少すると予測されています。
相続に関しては、増えるのではなく減っていくことが考えられるでしょう。
そうなると、こうした相続放置も減るのではないかと思われますが、実は逆ではないでしょうか。
人口が減り、相続対象者が減ることで、たしかに特定はしやすくなるかもしれません。
しかし、少子化で縁戚関係が薄くなることにより、ますます相続放置は増すものと考えられます。
これには、人口減少による不動産価値の変遷も関係するでしょう。
マンション管理組合では、築古の相続をどう納得してもらえるかも問題になりそうです。
いずれにしても、マンション管理組合であっても相続が発生したことを把握し、連絡先を明確にして、請求などの手続きだけは怠らないことが、この問題を「管理組合の相続放置」にしないためには必要でしょう。
対策の第一歩とてし、毎年行なわれる定期管理組合総会のタイミングでの組合員名簿の更新作業を続けておきましょう。