マンション火災時の避難路は自治体によって有利や不利があるかもしれない

 

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日経アーキテクチャの記事に「大阪の超高層マンションに「エレベーター避難」の許可」というものがありました。

 

 

これによると、竹中工務店が大阪市内で建設している「ザ・パークハウス中之島タワー」という超高層分譲マンションで、火災が起きた際に非常用エレベーターを使って避難できるようになったそうです。

 

この物件、55階建てで免震構造。総戸数は894戸という規模の大きい建築物なので、いろいろと許可を受けないと竣工できないはずです。その1つにあったのが、この防災計画書というものだったようですね。

 

「ザ・パークハウス中之島タワー」では、設計・施工を担当した竹中工務店が東京消防庁の指導基準に準じて避難誘導計画を設計。防災評定委員会の審議を経て承認を得たというものだそうです。

 

防災評定委員会の審議が必要という話はあまり聞いたことがなかったのでちょっと調べてみました。

 

 

すると、防災計画評定というものがそもそも昭和56年に「高層建築物等に係る防災計画の指導について」という通達に基づいて運用されていたものが、平成12年に地方分権法が施行されることで失効し、この防災計画書作成の法的な根拠を失うことになっていたようです。

なので、建築関係の試験にも(マンション管理関連を含めて)触れていなかったのですね。

 

しかし、すでに作成されている防災計画書の効力が失われては意味がないので、これを保障するよう国交省から通達が出され、自治体では個別に対応しているようです。

 

→国土交通省住宅局長が東京都知事宛に出した「地方分権に伴う住宅・建築行政に関する通達の取扱いについて (PDF)」(平成13年2月19日)

 

たとえば横浜市では、特殊建築物となる高さ31mを超える高層建築物などについては、防災上の適正な設計がなされているようにと、建築確認申請前に防災計画書の作成・提出を「お願い」しています。

必須書類ではないというニュアンスですが、建築確認申請前にという前書きから想像するに、これがなければ「建築確認は出しませんよ」と脅している感じがしますね。。。

 

→「防災計画書の作成についてのご案内|横浜市

 

横浜市では、提出された防災計画書をもとに、その月の第3火曜日に建築安全課担当者事前会議を開いてこれを議案都市、翌週第4火曜日に建築防災計画書審査委員会または建築防災計画書審査委員会専門部会を開催して検討。これに沿って内容を修正し、建築防災計画審査済票を交付し、これを経たうえで建築確認申請書の提出を受けるとしています。

 

建築防災計画評定に関しては、一般社団法人日本建築センターなどの外部団体が取り扱っているようです。自治体によってこの組織の評定を受けなさいと言う指定もあるようなのですが、いずれにしても地方分権によって各自治体の判断に委ねられています。

 

安全の基準に関して自治体ごとにバラバラの判断があるというのはちょっと不安にような気もするのですが、建ぺい率や容積率などが地域ごとに細かく分かれていることを考えると、国交省で画一的に決められず、かといって個別に掌握するのは現実的ではない、という判断なのでしょうか。

 

「ザ・パークハウス中之島タワー」の例がニュースになるということは、ほかのタワーマンションではいままでの規制のなかでなんとかやりくり(ごまかし)しながら建てちゃっていたということかもしれません。そうなると、ちょっと怖い話になるでしょうか。

 

避難計画はマンション管理組合の活動にもかなり大きく関係してくるので、こうした情報はぜひオープンにしていただきたいと思います。