管理会社の提案力とともにマンション組合員の理解力が求められるようになっているのではないか

 

「提案力が求められるこれからのマンション管理業」という記事。

 

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提案力が求められるこれからのマンション管理業 | ニッセイ基礎研究所



 

「マンションは管理を買え」という常套句を枕に、「中古マンションの管理ならチェックは容易です」というやや強引な展開です。

 

例えば、比較的新しいマンションにもかかわらず、エントランスや郵便ボックス、植栽など共用部が汚れていたり乱雑な感じがしたりするだけで、管理がおざなりになっていると思うはずです。注意喚起や禁止事項のビラがエントランスなど共用部にやたら多いとか、ゴミの出し方や駐輪場の整理整とん状態も気になるところです。

一方、古くても外壁や玄関、植栽などの手入れが行き届いているうえ、掲示板には住民の交流イベントのビラがいくつも貼ってあり、管理員さんや受付の方が気持ちよく挨拶してくれきびきびと働いている、そういった光景を目にするだけで、そのマンションに良い感じを持つのではないでしょうか。

これらは、マンション管理状況の評価ポイントとしてあながち的外れではありません。

 

資産価値という意味では、こうした外面的に現われているポイントも、もちろん要チェックでしょう。

 

そして内部的なチェック・ポイントとして、最重要とも言える管理会社の問題。

 

ただし、安さと質とのバランスを考えず、性悪説に基づいて相見積もりなどで一番コストの安い管理会社を選ぼうとすると、「安かろう、悪かろう」となって管理組合と管理会社の信頼関係が失われるリスクも高くなります。月々の管理費が安く管理の質も低いマンションが、資産価値の落ちやすいマンションであることは明らかです。

 

なにが妥当なのかというところで、大方の管理組合員は管理業務に無知ですし、管理会社も営利企業すなわちボランティアではないので、当然売上につながる作業を優先します。このあたりがいつも管理会社への不満として表出するわけです。

ところが、根本的に管理会社の業務を理解していないから、管理替えをしても不満が解消されることはほとんどないでしょう。

替えても替えても同じ状態、なんで管理会社はオレの言うことを聞かないんだと、どんどんモンスター・クレーマー化していくわけです。

 

管理会社にできることとできないことは、管理業務委託書を読めばわかります。管理会社は丸ごとマンションの面倒を見てくれる優しいおかあさんではないのです。

 

「住宅はクレーム産業」といわれるように、マンション管理の現場では、細々したトラブルシューティング的な仕事が毎日発生します。

 

こうした状況に対処するためにも、提案力のある管理会社が求められる、という論旨です。

 

巨額の費用がかかる大規模修繕では、工事費の見積もりが一番安い会社が選ばれがちで、現在の管理会社やその関係会社が必ずしも指名されないことが少なくありません。しかし、そのマンションの管理状態を最も知りうる立場の会社が、価格だけでしか勝負できないのはもったいないことです。

 

とても意味のある一般論ですが、実際に現場でいちばん説得力があるのは“価格“であるというのが現実です。先述の理解不足の人たちでは、たとえ管理会社が実状に即した提案をしても、それを理解しようとしない、あるいはできないからです。

また、管理替えを考えるぐらいであれば、管理会社への不信感が募っているはずです。信頼されていない管理会社からの提案を受け入れるのはなおさら難しいでしょう。

 

最終的には費用との兼ね合いもあるでしょうが、修繕工事の専門会社には真似のできない、マンションの資産価値を引き上げ、生活利便性や快適性を高めるような魅力的な提案なら管理組合の心は大きく動くはずです。

 

まったく正論で、まったく同意したいところですが、「管理組合の心は大きく動くはず」という部分に関してはちょっと疑問。

 

管理会社の担当者は多くの事案を経験して、提案内容も実践的です。ところが、そうした魅力的な提案も、一部の理解不足の組合員の偏見によって受け入れられないことが多々あります。

おとなしく聞いていた組合員でさえ、意見を求められると一つ覚えのように「相見積をとったほうがいいんじゃないですか」と言ったりします。相見積を精査する知識もないのであれば、当然のように価格が低いほうを選んでしまいます。

 

記事が言うように、管理会社の提案力はとても重要だと思います。しかし、それ以上に議決権をもつ組合員のほうに求められる力量のほうが増してきているというのが、私の実感なのですが。