マンション管理組合運営をうるさ型組合員のいいなりにしたいために
「マンション管理センター通信」2013年11月号の「円滑な管理組合運営と管理会社の関係を考える」という記事が目に留まりました。
横浜マリン法事務所の弁護士・石川恵美子氏の記事です。
注目したのは……
マンションの管理組合運営における管理組合と管理会社の関係を、法的な面から解説した内容のうち、管理員やフロントマンへの対応について言及した部分。
一組合員あるいは理事恩一員が理事会を通さず、直接、電子メールで、担当フロントマンやその上司に、管理会社に対するモンクを送りつけ、1、2日以内に返事がないと激怒する方が増えています。
増えているというのは実感できます。実際に私の知っている範囲でも、こうしたクレーマーのクレームについての事例を耳にしています。
この後に、ほとんどが担当の上司、さらにその上司、ついには社長に直接返事を要求し、さもなくば直接謝罪せよとエスカレートしていきます。管理会社は、最初のうちは2、3通に1度は返事を出しているようですが、上司を呼べという自体になると、理事会や理事長に打ち明け、管理会社としてこの文句に対する考えを尋ねてくるようです。
理事がクレーマーの場合には、理事会で罵倒の場面が繰り広げられることになります。
私個人も、フロントマンの対応に怒ったこともあり、返事が遅れることに腹を立てたこともありますので、管理会社の対応の悪さ・遅さという“火に油を注ぐ”要因がないわけではないと感じています。
しかし、管理会社はあくまで管理業務の一部を委託されたビジネス・パートナーであることを忘れがちになることも否めません。
自分の手下のように思っているから、「対応が悪い」「返事が遅い」という感情的な対立に発展してしまうことが考えられます。
管理会社はあくまで管理組合と契約関係にあり、組合員に隷属しているわけではないことは言うまでもありません。
事態が明るみになってくると、理事会では対応に迫られることになります。
この場合、この組合員の主張がどこまで適切な文句(!?)であるかを管理組合として迅速に調査し判断し、管理会社にきちんとした態度で対応することが必要です。管理会社が、管理の主体なのだということを、この組合員にも、管理会社にも明確にしなければなりません。
管理組合が乗り出すとなると、「フロントを替えろ」「管理会社を替えろ」という論点が出てくることが予想されます。
フロントマンのスキルにも当然、優劣はありますので、苦情の内容を理事会が精査することは必要でしょう。
これを放置すると、このマンションは、今後このうるさ型の組合員のいいなりに管理運営を行うようになり、住人たちはたいへんな思いをします。
モンスターのクレームの大半は自己主張にすぎず、根拠が薄かったりなかったりするので、ほかの組合員は傍観モードになりがちです。
しかし、これを放置するとモンスターを太らせる、そして増殖させるだけであると石川氏は指摘しています。これには同感です。
えてして総会や理事会では“声の大きい組合員”が主導権を握ったりするのですが、これこそがトラブルの大元になることが多いと感じています。
理事会は、できれば全員が共通認識のもとに統一した質問や意見、指示を管理会社に伝えましょう。バラバラに、各自の意見や希望を電話やメールで言うのは、担当フロントマンも混乱しますし、理事同士の意思疎通が図れないようでは、管理運営もうまくいきません。とくに理事長は、権限があるからといって、思いつきをほかの理事に諮らずどんどん進めるのは慎みましょう。内紛のもとを作り出しているようなものです。
理事会で統一した見解をもつのはかなり難しいのではないかと実感しています。
また、クレーマーは規約すら無視しようとするわけですから、説得の根拠も共通認識としてもてない状況が想定されます。
私はこうしたトラブルには、あくまでルールに準拠した対応をとるべきだと考えて実行しています。管理規約を守り、それ以外については自主的な判断をしない、必要であれば総会議案とするべく公にして検討するなど。
管理会社に対しては、管理委託契約を参照しながら、改めるべき点は申し入れ、契約以外の部分でのクレームについては管理組合が処理すべき案件であることを認識して対処すべきです。