周辺の苦情で共有部分の設備を撤去する方向に傾いた管理組合判断の是非に付いて

 

マンションの屋上には、広告板や携帯電話の基地局などを設置しているケースがあります。

 

4682267644_295813af1d_n photo by Luciano Consolini

 

「週刊金曜日」のサイトに掲載されていたのは、携帯電話の基地局に関するトラブル。

 

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電磁波で健康被害とSBを解約――携帯基地局は撤去へ

北海道札幌市のマンションで、携帯電話基地局の撤去を求める裁判に敗訴したものの、結局、基地局が撤去されることになるという興味深い事態が起きている。

札幌市真駒内のマンションの屋上には、1998年にウィルコム、2004年にソフトバンク(SB)の基地局が設置された。その後、周辺住民は頭痛や不眠などの体調不良を起こすようになり、基地局の撤去を求める署名を集めてマンション管理組合に提出。管理組合は基地局の契約解除を決定し、契約期間が1年だったウィルコムは06年に撤去された。しかし、SBに関しては、契約期間が10年と長期で、管理組合側の都合では解約できない契約内容となっていた。

このため管理組合は、賃貸借契約の無効と解除を求めて07年、札幌地裁に提訴。電磁波に関する事前説明が不十分であったことや、民法602条では建物の契約賃貸借は3年と定められており、10年の契約は無効だったと主張したが、地裁は同法の適用外と判断したため敗訴。高裁でも敗訴し、最高裁へ上告したが受理されず、11年に敗訴が確定した。

マンション側は、賃借料として年間100万円の収入を得ていたが、12年の総会で、現在の契約期間を終えたら契約を更新しないことを賛成多数で決定した。これにより、今月末までに、基地局は撤去されることとなったのだ。

あるマンション住民は、「調べれば調べるほど、電磁波にはグレーな部分があることがわかったし、実際に健康被害も起きている。個人的には健康を最優先すべきだと考えているので、撤去ができて良かった」と話した。

深刻な症状に苦しんできた周辺住民は、「やっと安心して過ごせるようになるのは嬉しい。この地域にまた設置されないよう、町内会全体で注意していきたい」とした。

(加藤やすこ・ジャーナリスト、3月28日号)

 

読んでいるうちに、なーんか論点がずれてるなぁと思って

読み返してみると、共有部分の使用に関する問題として

とらえているのではなく、健康被害を問題にしていたんですね。

 

これはアスベスト問題に近い類いの問題のようです。

 

経緯を整理すると、

1)マンションの屋上に携帯電話の基地局を建てたら周辺住民から苦情が出た。

2)マンション管理組合では苦情を受けて基地局の契約解除と撤去をしようとしたが、契約上ではできないために訴訟を起こした。

3)最高裁上告までしても契約は覆らなかった。

4)契約満了に伴って更新しないことを管理組合総会で決議して撤去の方向へ進んだ。

 

以上のような内容です。

私が驚いたのは、契約を承認した管理組合が契約の撤回を求めて訴訟を起こしていることと、周辺住民がクレームによって管理組合に圧力をかけていることです。

 

管理組合が矢面に立たされて裁判まで起こしているのは、賃料をもらっているという“負い目”を感じていたからではないかと推測されます。

 

私有地内の合法的な建築物や設備をクレームによって所有者(マンション所有者全体=マンション管理組合)が負担して対処しなければならないのかという疑問が浮かび、それが「論点のずれ」というふうに感じられていたのだと思います。

最高裁判決(棄却)でもわかるように、基地局は違法ではなく、法律的に見て撤去すべきと判断されるものではありません。もちろん、管理組合がそれを責任をもってするべきことにも該当しないことを意味します。

百歩譲って、周辺住民の反対派がお金を積んで「撤去してくれ」と交渉してくるのであれば、携帯電話会社と違約金の交渉をして、それについて負担割合を周辺住民と協議して、自己負担割合についての総会決議を経て対処する、というのが私が思い付いた最善策です。

この件では、管理組合が訴訟を起こして敗訴しているので、訴訟費用などは管理費修繕積立金等から支払われていると思われます。

 

軽挙によって資産が毀損された責任のほうが重いように感じます。

 

別の視点では、収入に眼がくらんで屋上に広告板やら中継局やら太陽光発電パネルなどをやたらに設置しようとするのは、少し考えてからのほうがいいのではないかということです。

まず、耐力に問題が発生して、耐震性が劣ってしまうことが考えられます。

さらに、屋上防水にも影響するなど懸念が増して、メンテナンスのしづらさが加わればさらに漏水などの事故が起きやすくなる心配があります。

 

マンションの資産価値の向上に寄与しない、というのがこの問題の前提に濃く漂っていると思います。

 

それにしてもこの記事の締め括りが、周辺住民の声が健康被害を起こす(と思われる)悪いマンションを是正して安心して暮らすことができるようになりましたとさ、めでたしめでたしーーとなっているのは呆れてしまいますが。

いずれにしても、笑えない記事です。