なぜ管理組合理事長は責任を負わせられなければいけないのか #マンション管理

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管理組合の交流会で、「管理組合が後から責めを追わせられないために」と題したレクチャーが行なわれたので、メモっておきたいと思います。

管理組合の定期総会でありがちといえば、…

出席者が役員(とくに議長である理事長)に向かって詰問するシーン。

総会出席者が減少しているなかで、わざわざ役員でもないのに総会に出席するのは、言葉は悪いですが、魂胆がある人である確率が高いです。

あ、ここは苦笑いするところですので、お忘れなく。

この点に関して疑問をもつ管理組合側の人間(管理組合役員および管理会社の担当者)が多いので、このような問題提起があるのだと思います。

詰問者は、自分の財産の管理が適正になされていないと感じるから、必然的に厳しい口調になるのでしょう。それは当然のことかもしれません。

しかし、管理組合の責任は、管理組合員全員の責任を代理しているものです。つまり、詰問者も本来は自分が責任を負っている立場であるわけです。

ところが、自分の責任を棚にあげて“執行部”である管理組合、または責任者である理事長の責任を追求することで、論理をすり替えていることになります。

この点は、総会で常に確認すべき論点ではないかと感じています。

要するに、クレーマーはクレームを言える権利を有している立場であるとともに、そのクレームを自ら解決する義務も背負っているということです。

この点を忘れて、平謝りしたり、不必要に威丈高になったりする理事長や役員がいると、治まる話も治まらなくなります。

会合では、「役員は、善意の“使者”として仲介するという姿勢を貫くことが、穏やかに問題を解決するポイント」だという意見が出ました。

また、不作為による管理義務違反についての責任を追求されるというリスクも役員にはあります。

これは、役員を引き受けることによって生じる責任で、「そういう貴方も私を選んだ責任はあるんですよ」という逃げは通用しない場合があります。

具体的には、再三者に対して、マンション敷地内や設備、共有物などが原因で起きた事故の対処に関するものです。

敷地内の樹木を放置していたことに起因して起きたトラブルに関しては、組合員全員の責任ではあるものの、実際の執行責任を負っている管理組合役員が“放置”していたことが問題視されるということです。

設備(消防・防犯)の管理や安全対策をキチンと処理していないことによって起きた問題は、管理組合員を代表して理事長がその責任を負わなければならなくなります。

理事会の議案として上程し、話し合いをして決議し、管理会社に有効な指示を発しているということが記録に残っていない限り、理事長ならびに理事の責任は免れません。

しかし、逆に考えれば、きちんと問題を(管理会社から報告を受けて)理事会に上程し、対策を話し合っているという理事会であれば、少なくとも過失割合が100%になることはならないでしょう。

もちろん、予測できない問題はいつでも起きる可能性はありますし、100%の対策を執行できる管理組合は「皆無である」と言えるでしょう。

それを踏まえて、先手を打って対策を検討(“検討”ということは必ずしも実行していないという意味も含んでいます)していることを示すことが、詰問をしてくるような総会出席者に対する有効な反論になるとともに、マンション自体の適切な管理を施すための計画案にもなるという、一石二鳥の効果をもたらすのではないかと思っています。

事なかれ主義で見ないふりをするマンション管理ではなく、積極的に問題を拾っておく(必ずしも解決するということではなく)というスタンスが、管理のあり方を変えていくのではないかと、私の現場経験では思っているのですが、いかがでしょうか。