管理組合総会で理事会一任された議案について理事会が理事長一任にした件の是非 #マンション管理

マンション管理業協会のホームページに掲載されている弁護士の篠原みち子先生のQ&Aコーナー。

質問は…

弁護士 篠原みち子先生のマンション管理お役立ちコーナー|一般社団法人 マンション管理業協会
工事見積の取得等を理事長主体で行うことは問題ないと考えますが、理事会がすべてを理事長に丸投げすることは、総会で付託された事項の執行として不適切と言わざるを得ないでしょう。

監事の役割は、理事会業務の執行がその責務や事業計画等に照らして適正であるかを、第三者としてチェックすることにあり、監事の申し出はもっともであると考えられます。


通常総会で修繕工事の議案を理事会一任として決議され、その後の理事会で「理事長に一任」という理事会決議になったものの、監事から「総会では理事会に付託されたもので、それを勝手に理事長一任にしてはいかがなものか」という趣旨の意義が出た、というものだと推察します。

役員の役割分担で、理事と監事を認識し分けている管理組合は多くないのではないかと思います。

監事は理事会のなかの経理をチェックする役目、ぐらいの認識の人が多いということです。

監事には、管理組合およびその付託を受ける理事会が適正に運営されているかどうかを監視し、もし疑義があれば臨時総会を招集できるほどの独立性が求められます。

従って、この質問の監事の異議はもっともなもので、理事会全体でちゃんと修繕工事の内容と経緯を把握することを条件に「理事会一任」とした総会の決議をないがしろにしていると指摘しているわけです。

従って、この理事会では、理事長への丸投げを止めて、理事会を開催しながら、修繕工事のチェックを続けていく必要があります。

理事会の議事録を理事会開催の一定期間後に発行している管理組合は少ないかもしれません。

往々にして、総会で決まったことはとにかくやればそれですむと考えている役員も多く、実際に手間と時間をかけて議決された事案を理事会が検討しながら進めるのは困難な管理組合もあるでしょう。

結局、理事長への押し付けになって、理事長も面倒だから業者にお任せ、もしくはキックバックなど不正な動きが出てくるのも、すべて「公開での話し合いのなかで決めていく」という原則を崩していくことから生じるトラブルではないかと思います。

理事会でいちいち細部まで検討するのは面倒くさいことですが、扱っているのはお金も建物も自分を含めた組合員の“財産”であることを忘れないようにしたいものです。