千葉市が要件を備えた管理組合を自治会と認定 #マンション管理

マンションの管理の主体が変化しそうな、大きなニュースです。

千葉市で、管理組合を自治会と認定するというもの。

最初、このニュースを耳にしたときに、町会や地区自治会への強制的な組み入れを目的としているのかと思いました。

しかし、ニュースをよく吟味してみると、マンションを1つの自治体として認めて、管理組合が行政と折衝できるようにするというもので、これは管理組合のレベルを上げてくれる追い風になるかもしれないと気づきました。


千葉市が要件を備えた管理組合を自治会と認定|マンション管理オンライン

千葉市に限らず、全国のほとんどの自治体は「管理組合そのものを自治会とみなす」施策はとっていません。また、運用上の工夫で「管理組合を準自治会組織として認める」ような場合でも、管理組合としては次のような暫定措置をとる必要がありました。

●対外的には「自治会」を名乗り協議会等に加入する
●役員のうち1名が自治会長に就任または兼務する
●自治会長名義の銀行預金口座を別に開設する

今回、千葉市が管理組合の位置づけを改め、条件付きながら「管理組合を自治会として認める」との方針転換を図ったことで、上記の暫定措置は全て不要となります。名実ともに、管理組合が居住者の利益を代表する団体を兼務して行政機関等との交渉にあたることが可能となったといえるでしょう。

また、大きな波及効果のひとつとして、「所有者」だけでなく賃借人等を含む「居住者」の視点から管理組合業務を行う根拠が明確になることが期待されます。

区分所有法に連なる法体系では、原則的に管理組合の構成員(組合員)が「現に居住する区分所有者」と想定されているため、管理組合にとってその他の居住者、とくに賃借人は、組合員を通じた間接的な交渉対象として扱う傾向がありました。自治会を兼務する管理組合にとっては、賃借人も同居する家族も等しくマンションコミュニティの世帯構成員となります。

「居住者」を直接的な交渉対象と位置づけることで、管理組合による居住者情報の把握が行いやすくなる可能性もあり、“千葉市方式”が良き前例として周辺自治体に広まる可能性もあると思われます。

このほかに、千葉市が管理組合を自治会と認定するには、一定の要件が必要となります。

1)市連協、区連協への加入についての管理組合総会決議。

2)(加入者のみの)名簿の整備。

3)会計処理(組合の判断に委ねる)。

管理組合が自治会に認可されると、いちばんのメリットは「行政の補助を直接受けられるようになる」ということです。

これまで、自治会には多くの補助がありました。しかし、管理組合は自治組織に属していなかったため、この補助を受けられません。

通路の防犯灯を設置するにも、自治会が申請すれば補助金が下りるのに、管理組合ではNGだったのです。

また、防犯や防災などのパンフレットを配ったりイヴェントを開いたりするにも、自治会主催であれば補助金はもらえますが、管理組合ではダメでした。

これが、認定された管理組合であれば、補助金をもらって活動できるようになるというものです。

行政としては、参加者が激減している自治会を立て直すきっかけにしたいのと、管理組合側では不在区分所有者の賃借人を管理に参加させるきっかけになるという、両得的な考えというわけです。

もちろん、これには問題もまだまだ残っています。

マンション管理の憲法である管理規約は、「管理または使用に関する区分所有者相互の事項」を定めたものであることから、これに自治会加入は相当しないと考えられ、従って自治会加入の条項を規約に加えても、拘束力をもたないーーというものです。

これについて、規約の変更は当然特別決議によらなければなりませんが、各戸が自治会に参加するかしないかの判断を自由にできることは、理事会または総会の普通決議で確認しておけば足りるという判断例が示されているようです。

また、区分所有権を有していない「居住者」を管理組合の活動に参加させることについては、別途、区分所有法に違反しない細則等を取り決めておく必要があるでしょう。

この問題、自治への参加という責務が発生するという視点ではちょっと厄介な問題になるかと思いますが、一方で管理組合運営の活性化という捉え方もできるので、千葉市の実績や、どのように広がっていくかを注視したいと思います。