民泊の 届出・登録申請受付の開始でマンション管理組合はなにをしておくべきか
2018年3月15日から住宅宿泊事業(民泊)の届出・登録申請の受付が始まりました。
これまで明確な規定がなく、グレーゾーンで運営が行われていた民泊ですが、 昨年6月16日に住宅宿泊事業法が公布され、適正な民泊事業の遂行のための措置がとられることになります。
届出・登録申請の受付開始は、6月15日に施行される同法の対象を明確にするためのもので、届出がない事業者や登録のない仲介業者をあぶり出す目的があります。
同法は、民泊の利用者、住宅宿泊事業者(民泊事業者)、住宅宿泊仲介業者に関係するものですが、対象となる宿泊所に異なる所有権者がいる分譲マンションでのトラブルを避けるために、2017年8月29日付けでマンション標準管理規約を改正。マンション管理組合が民泊問題で混乱しないための対策を周知するようにしていました。
いよいよ民泊の法規制が本格化するこのタイミングで、マンション管理組合に関係する民泊法関連を復習しておきましょう。
民泊をにらんだマンション標準管理規約改正
分譲マンションにおける民泊のトラブルは、各マンション管理組合にとっても頭の痛い問題として話題に上がっていました。
これまでの分譲マンションに関する法律や規制では、原則として専有部分で行なわれることに対してマンション管理組合が口出しできることはきわめて少なく、迷惑行為が顕在化することでそれを理由に問題の民泊を実施している戸のオーナーと話し合いをするのがやっと、というのが実状。
提訴して迷惑行為を立証して、使用停止あるいは明け渡しまでもっているのはかなり難しいと言わざるをえませんでした。
しかし、平成29年8月29日の標準管理規約の改正では、あらかじめマンション管理組合が組合員(各戸の所有者)の民泊事業を許容するかしないかの判断を明示するように指導し、民泊を禁止する条項を規約に盛り込むことで、民泊事業を排除する可能性を高めることが出来るとしています。
マンション管理組合の民泊対策
この管理規約による民泊の容認・禁止は、そのまま法令違反になるほど強制力のあるものではありませんが、少なくとも分譲マンションにおける所有権者の「総意」として認められ、係争になった場合の有効な主張になります。
注意しなければならないのは、すでに民泊事業の届出が始まったことから、都道府県知事によって先にその戸の民泊が認められた場合は、後追いで規約を改正しても禁止に効力がなくなってしまう点です。
先に民泊の申請がなされて、それに気づいたほかの所有者から反対の声が上がり、規約を改正して民泊を禁止しても、既存不適格という扱いになってしまうのです。
これを防ぐためには、マンション管理組合で民泊の許容か禁止かの合意をとっておき、規約変更の決議をしなければなりません。
国土交通省では、昨年からこの規約改正の必要性に関する周知をしていたようですが、規約改正には特別決議での議決が必要となるため、ハードルはかなり高いと言わざるをえません。
そのため、理事会での容認や禁止に関する話し合いがもたれた事実(議事録)や総会議案での容認や禁止への言及があれば、民泊事業の届出に影響することになるようです。
というのも、民泊事業の届出は、届出先の都道府県知事で審査する際に、分譲マンションのほかの所有権者の意向を諮るスタンスを示しているからです。
したがって、分譲マンションでの民泊を禁止したい場合には、
- 規約を改正して、国土交通省が示した改正案にしたがってマンション管理規約を改正しておく(管理組合総会での特別決議を経る必要あり)
- 総会議案として上程しておく(総会開催が2018年3月15日以降でも有効)
- 理事会などで検討している証拠を残しておく(議事録など)
のどれかを実行しておくことが求められることになります。
1>2>3の順で効力の強さが下がってきますが、理事会レベルであってもこの問題について話し合ったことを記録しておくことをお勧めします。理事会は所有権者の代表であり、管理組合の運営の意味でその意思が対外的にも効力を発揮すると考えられるからです。
まとめ
民泊は戸内すなわち専有部分の使用法によるものなので、原則としてマンション管理組合は関与しづらいものでしたが、マンション標準管理規約改正によって行政が事業者の一方的な権利主張を許さないという「マンション管理組合側の余地」を認めていることは十分に認識しておくべきでしょう。
ただし、そうした余地を上手く利用できるのも、期限前に対策を立てられたときまでです。
まだ民泊への対応を保留しているマンション管理組合では、早急に容認か禁止かの総意をまとめ、禁止であればしかるべき手続きをとっておくようにしてください。
手遅れになる前に。。。