理事会の決議で理事長を解任することができるという最高裁判断の中身がビミョーです

この記事をざっくり説明すると……

 

福岡県久留米市のマンション管理組合で争われていた、管理組合の理事会レベルでの理事長解任ができるか否かの裁判で、最高裁が’「理事会の理事長解任は妥当」という判断を示しました。

これは、このブログでも取り上げた判例の続報です。

 

 

判決文がネットにアップされていたので読んでみると、必ずしも即座に解任することができるものではないので、注意が必要だと思いました。

その点を詳しく見ていきたいと思います。

 

訴訟の内容と経緯

この訴訟は、平成25年のこの管理組合の臨時総会絡みで起きた“事件”の是非を問うものです。

発端は、8月に開催された通常総会で理事を選任、9月開催の理事会で役職が決められたあと、理事長が理事会に反対されていた議案を諮ろうとするために、臨時総会を招集する旨の通知を発し、これに対して臨時総会の10日後に開催が決まっていた理事会でこの理事長を解任して、その理事長が発した臨時総会が無効であるとしました。

本件に関して上告人はマンション管理組合で、原審である福岡高等裁判所の「理事会決議、総会決議など決議のが無効であった」とする判決に対して、異議を申し立てているわけです。

原審では、このマンション管理組合の理事会が行なった理事会決議が規約違反であることから無効としていて、理事長解任は理事会ではできなかったとして、したがって理事長が召集した臨時総会は有効だから、理事会はそれを認めなさい、ということです。

これに対して最高裁では、「原審(福岡高等裁判所)の判断は是認することができない」と、かなり厳しく言い渡しています。

理由として、理事長など理事会の役職の選任と解任は理事の過半数の一致に委ねられることが規約(標準管理規約)の合理的意思に合致するとして、まず被上告人側が訴えていた「理事長の選任は理事の互選によるが、解任はできない」とする主張を破棄。

本件に関しては、臨時総会招集通知を発したあとの理事会で理事長が解任されたことで、臨時総会の招集が無効になり、これらの理事会の行動を無効としていた高裁判断を「明らかな法令の違反がある」として、その点について差し戻しするとしたものです。

 

注意点

この判決は一見、「理事会の決議で理事長を解任することが最高裁で認められた」と捉えられます。

原則はそうなのですが、問題は「理事長を解任するための理事会を理事では招集できない」というところにあります。

判決に詳しく経緯が書いてあるので、読んでいただくとわかるのですが、この訴訟では

1)9月に理事長が選任された。
2)10/20に理事会が招集されていた。
3)10/10に理事長が理事会で反対されていた議案についての是非を問う臨時総会の招集通知を発した。

という特定の条件があります。

この最高裁判断で被上告人側でなる解任されることになった理事長の「敗因」は、理事会を招集していたことです。

おそらく、定期理事会の召集が決まっていて、その前の理事会でこの訴訟の原因にもなっている議案を諮ったところ理事から反対され、次の理事会で綸旨総会招集を諮っても反対されると考えての、理事会前の臨時総会通知の発報だったのではないでしょうか。

しかし、理事会ではその議案に反対していたので、臨時総会を開催させないために、理事長の解任をして臨時総会の開催がその資格を持っていない人によるものとしてしまった、というわけです。

つまり、理事会の開催が決まっていない状態で臨時総会の通知が発報され、開催されていれば、その阻止及びこうした訴訟はできなかった可能性が高いと思われます。

理事および監事が(理事長を解任する目的で)理事会の開催招集をすることができないというのがまず前提にあります。

つまり、理事長が理事会を開催する意志を示していなければ、解任動議も出すことが出来ないわけです。

もちろん、こうした縛りは、理事長という地位を疎かにしないためのものでもあるのですが、どちらかというと権力は守られやすく、この訴訟は例外的に解任が認められたと言ってもいいのではないでしょうか。

 

まとめ

なり手不足で輪番や割り当てによる理事長選任が増えていることが懸念されます。

なにもしない理事長は、それはそれでマンションの維持管理にとっては困りものですが、妙な責任感で突っ走ってしまう人がその地位に就くのも面倒なのです。

やはり、マンション管理組合の活動は、そのマンションの所有者にとって運命を左右すると言っても過言ではないほどの問題が発生しかねないことを肝に銘じて、組合員の意識を高める「呼び掛け」を続けていくことが必要なのではないでしょうか。

 

参照:平成29年(受)第84号