共用部分の塗り替えは質より量より下地補修が重要 #マンション管理

塗装改修工事についての記事があったので、ピックアップしました。

記事では…

まず塗装仕上げの役割について3つの目的をあげています。

1. 美観性の付与
2. 塗装素地を保護する役目
3. 塗装素地に新しい機能を与えること

塗装仕上げでは最近、高日射反射率塗料(遮熱塗料)や、汚染防止効果のある光触媒塗料、抗菌塗料など、機能を付加したものが開発されている。

次に、どういう状態が塗装の劣化であるのかをあげています。

表面の劣化
・汚れ
・光沢低下
・変退色
・白亜化(チョーキング)

内部の劣化
・膨れ
・割れ
・剥がれ

「塗装仕上げの劣化は、外部からの劣化因子の影響を受けて、塗膜表面から内部さらに塗装素地へと進行するのが一般的」なので、「状態を定期的点検により監視して、適切な時期に塗装改修工事を行うことが大切」としています。

次に、どの時点でどのように改修工事の判断をするかという点について言及しています。

★塗膜表面の劣化が主である場合(美観は損なわれているが素地は保持されている)
⇒表面の汚れや粉状物の洗浄・除去をして新規に上塗りするのが標準的な仕様。

★塗膜内部の劣化が主である場合(美観も素地の保護も損なわれている)
⇒洗浄前に劣化した塗膜(膨れ、割れ、剥がれの現象を起こした塗膜)をディスクサンダー、スクレーパー、ブラシ等で除去する必要がある(劣化状況が認められない部分の塗膜=活膜は残しておく)。塗膜を除去した部分には、下塗り、中塗りを施し、最後に活膜を含めた全面に上塗り塗装をするのが標準的な仕様。

★内部の素材が腐食している場合は、その部分の補修工事が必要。
⇒補修した素地の上には、新設塗装工事の場合と同じ塗装を行うのが標準的な仕様。

どの時点でしなくてはいけないのではなく、どの時点であればなにができるかを考えるのが塗装改修工事であると言えるでしょう。

それはつまりーー
美観性重視⇒表面の劣化の時点で塗り替える。
内部の劣化を発見⇒素地の劣化を防止するために塗り替える。

一般的には「塗膜内部の劣化が認められるようになった時点で、塗膜素地の劣化を防止するため塗替えを行う」。

これは、「塗装素地は長期間にわたって健全であるというのが、塗装仕上げの基本的考え方」だからということです。

最後に、塗装改修工事の施工で大切なポイントを3つあげています。

1. 塗装仕上げの状態を定期的にチェックし、適切な時期に塗装改修工事を行うこと
2. 塗膜の劣化状況に応じた適切な塗装改修工事を選択すること
3. 改修塗装前の下地調整を丁寧に行い付着物の除去、劣化塗膜の除去、素地の補修等が十分に行われていることを検査すること

なかでも「3. 改修塗装前の下地調整を丁寧に行い付着物の除去、劣化塗膜の除去、素地の補修等が十分に行われていることを検査すること」が最重要であると筆者は言っています。

塗装改修工事の検討では、どのような塗料を何回塗るかが主眼点になっていますが、「工事後の塗装仕上げの耐久性を確保するためには「高価な耐候性塗料を使用するより、塗り回数を2回塗りから3回塗りにするより」も、前記の下地調整が重要である、ということです。

鉄部の塗替えは周期が短い計画修繕項目ですので、管理組合では話題にのぼる頻度も高いと思いますので、参考になればと思います。

記事の引用元は、「計画修繕工事における塗装改修工事のポイント」本橋健司(日本建築仕上学会会長、「マンション管理センター通信」2012年11月号)