[Book Review]貴船美彦『マンション管理組合理事になったら読む本』

 

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本書は…

 

大手設計事務所を経て1985年に独立、建設総合コンサルタントを営む会社の代表取締役である著者が、マンションの理事として、大規模修繕や管理会社との付き合い方について、その基本を解説したもの。

 

ただ、大半を割いて、マンションの歴史や共同体としての存在を意味づけるなど、実際のマンションの管理組合理事会の活動ノウハウからは外れたエピソードも多いので、その手のビジネス本的なノウハウを期待する向きにはオススメできない。

 

著者の主眼は、理事会を楽しみにできるかという点で、これについてはかなり同意できるが、本書からはそのためのノウハウを得るには至らないところは残念だ。

 

人間なら誰でも楽しいことに惹かれてはまってしまうこともあるでしょう。逆につまらないことからは億劫が先に立ち自然と足も遠のいてしまいます。そこで、理事の仕事をできるだけ楽しもうとする気持ちが大切になります。

 

うん、そんなんですが、そういう境地になれるのは、知識を備えて、周期には良識のある理事さんが揃っていることが条件なんですよね…。

 

著者は、一級建築士で修繕工事のコンサルタントも経験を積んでいるだけに、修繕の解説はかなり役に立つので、この部分はご一読をオススメします。

 

つまり、マンションのベースは鉄筋コンクリートということ。その点がわかれば、建物を守るためには、コンクリートを守るというのが前提となることが理解できるはずです。

 

築40年を越えたマンションで無視できなくなるのは、補強と建て替え。

 

業界の目安としては、築年数が古いいわゆる新耐震設計以前のマンションに耐震補強を施す場合、1戸当たりの平均負担額は数百万円以上にもなるといわれています。こうした理由からも、ほとんどのマンションには、耐震診断は行っても基準を満たす補強はできないという現実がのしかかります。それを前提に、さまざまな判断をせざるを得ないのです。

 

そして、著書がコンサルタントをとおして見てきた管理組合の姿勢については、学ぶべき点が多いと思います。

 

マンションの住人のなかには一級建築士やマンション管理士や工事のベテランだっているでしょう。そうだとしても、マンションの大規模修繕工事のすべてをその一人に任せて大丈夫などという人は存在しないのは確かです。もしそういった経験や能力があるのなら、住民である自分たちのパートナーとして信頼できるコンサルタントを見つけ出すことにその力を活用すべきなのです。

 

理事になって困っている人には少し食い足りないかもしれませんが、理事の研修テキストとしてはかなり有用な内容ではないかと思いました。