管理組合が管理すべき最重要項目は長期修繕計画と修繕積立金

 

マンションは「管理を買え」とよく言いますが、「管理」とはなにかを買う前に熟知している人は多くないように思います。

 

ほかならぬ私もそのひとり。

 

5117954479_41ed07d795_m photo by jmb_craftypickle

 

それがきっかけで管理の勉強を始めたわけですが……

 

マンション管理は人間関係が大きく影響している部分がある一方で、数値化できる部分もあります。

 

数値化できる部分でもっとも重要なのは、マンションの価値を維持するためにどの時期にどれぐらいの費用が必要になるかというスケジュールと、そのための資金が足りているのかというもの。

 

前者が長期修繕計画で、後者が修繕積立金の管理になります。

 

このバランスがとれていないと、マンションの価値の維持は物理的にできなくなってしまいます。

 

マンション修繕積立金が足りない 負担こう決まる という記事では、築20年のマンションで修繕工事をしようとしたところ、資金が足りずに一時金を徴収する事態になったという例をあげて、マンション管理の問題点を解説しています。

 

 分譲マンションは、給排水設備や外壁などを定期的に修繕する必要があります。通常はマンションの管理組合が、住人(区分所有者)から毎月一定額の修繕積立金を集めて工事に備えます。国土交通省の調べによると、専有床面積あたりの修繕積立金は平均で1平方メートルあたり月200円程度です。70平方メートルの家なら1万4000円くらいです。

 

新築マンションでは、ローンとの絡みもあるので、なるべく購入後の負担が少ないほうがセールス的にも有利なため、月々の支払いとなる管理費&修繕積立金を理由なく低くしているケースが多く見られます。

 

10年後ぐらいに最初の大規模修繕工事を準備する段になって、修繕積立金口座の残高が少ないことに気づいて、規約を変更して修繕積立金を値上げするマンションも多いようです。

 

国交省では、こうしたトラブルを防ぐために、上記のような修繕積立金の目安を発表しているわけですが、なかなか新築時から正直にこれに準拠した修繕積立金が徴収されていないというのが実情です。

 

 工事をするのに積立金が足りない場合は、お金を手当てするしかありません。手段は大きく2つあります。「一時金」として一括で追加徴収する方法と、月々の積立金を値上げする方法です。

必要な工事が迫っている場合は、一時金を選択するのが現実的でしょう。一時金が多額になるのを防ぐには、管理組合で借り入れをする方法もあります。そのうえで修繕費を値上げし、借金はその後の積立金の中から返済します。

 

ところが、一時金はトラブルの原因になるんです。

 

 いずれにしても管理組合総会で最終的な判断をすることになります。仮に総会で一時金を徴収すると決議をした場合は、反対している人も従わなければなりません。

また、後から修繕費を値上げしたり、一時金を徴収したりする場合、マンションの所有年数は勘案されません。

 

不公平感も加わって、一時的な金銭負担を快く思っていない人は、いろいろと理由をつけて支払いを逃れようとしたりします。

 

一時金を徴収してまで急いで修繕工事をしなければならないという事態を事前に回避することがまず重要ですが、数年後の大規模修繕工事に資金が足りないという状況を数年前に把握できるのであれば、管理組合で借入することも検討に値します。その後の修繕積立金から返済していくプランが立てやすく、こうした個々への負担が少ない方法のほうが賛同を得やすいからです。

 

借入に関しては、住宅金融支援機構のマンションすまい・る債などが現実的でしょう。なかなか民間の金融機関で借入るのは難しいと思いますので。

 

また、住宅金融支援機構の借入基準には管理組合の健全な運営に資する項目も入っているので、今後の管理組合運営にも役に立ちます。

 

いずれにしても、長期修繕計画を把握して、足りない資金は早めに準備できるように先手を打てる管理組合運営が、トラブルを回避する最善策になると思います。

 

引用:日本経済新聞朝刊2014年11月5日付記事