管理組合理事長が組合費横領で逮捕を解析してみる[ニュース拾い読み]

兵庫・西宮の商業ビルの管理組合理事長だった人物が、組合口座から46万円を自分の口座に振り替えたとして逮捕されたというニュース。

商業ビルであっても、物件が区分され、それぞれ分譲されて、2以上の所有者が存在すれば、区分所有法の適用となります。

この事件は、2018年3月から2014年10月まで当該物件の管理組合理事長を務めていた人が、任期中の2019年6月に当該管理組合の口座から自分の口座に46万円を振り替えたというもの。

管理組合はこの事実に対して、刑事告訴を2021年4月に行なっています。

被告は容疑を否認。

この話題について、管理組合の課題として考えられることをピックアップしてみましょう。

ニュースの要点

1)なぜ(元)理事長は管理組合の口座から自分の口座に46万円を振り替ることができたのか?

2)なぜ46万円なのか?

(3) なぜ否認しているのか?

まず1)ですが、自由に振り替えることができたとすれば、管理組合の基本である組合口座の通帳と印鑑(理事長)の分別保管が実施されていなかったことが考えられます。

「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」では口座の印鑑等の管理を、管理費等の徴収を委託する管理会社に保管させることを禁じているため、自主管理でなければ所有者の共有財産である管理費等を保管する金融機関口座の通帳と印鑑(これはつまりこの2つが揃うと口座の入出金を実施できることを意味する。インターネットにおけるIDとパスワードも同様)を1人で管理するという相互監視と承認による不正リスクの回避という機能が働いていないことを意味しているわけです。

当該ビルは商業施設が入居する物件ということで「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」の適応外という認識にあったかもしれませんが、1棟に複数の所有者が存在する物件ということでは、マンションにおいてトラブル解決を目的に施行されたこの法律に準拠すべきで、法律に居住マンションか商業ビルかの区別がないことからも、このニュースはマンションの課題として取り上げるものであることがわかるはずです。

2)については、過去のマンション管理組合理事長(あるいは理事)による横領事件の被害額に比べるとかなり少額で、被告の主張を知りたいところですね。 

恐らく何らかの立替え(のつもり)が、自分への報酬を正規手続きを経ずに実施)といったあたりが想像の範囲ですが、いずれにしても共有財産を個人の判断で私有化してしまったことは、罪に問われても仕方のないことだと言わざるをえません。

ただ、前述のような、本人的には管理組合口座から自分に支払われてしかるべきと考えているであろうことなのだとすれば、本人否認もさもありなんと言えるでしょう。

ここでは謎解きをすることが本意ではないので、裁判や供述を追うことはしませんが、マンション管理組合の学びとするために、指摘した3点をおさらいしてみます。

まとめ

1. マンション管理組合のような複数の権利者がいる組織の財産管理は、単独で実施できないようにする。

2. 管理組合の資金移動は、原則として集会の決議を必ず通すように徹底する。

3. 理事長や役員への一任をせずに、報告と相互監視を徹底できる組織づくりをめざす。

──といったところでしょうか。魔が1ミリたりとも差す隙のないシステムづくりは、巡り巡ってトラブルを生まない環境となって管理組合運営の手間を削減することにつながるはずです。やっておいて損はない対策だと思うのです。