【マンション管理トピック】「マンション管理計画認定制度」にはどう対処すべきか(2022年4月時点)
2001年に施行された「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」(通称「マンション管理適正化法」)が2020年に改正され、改正法が2022年4月1日から施行された。
改正の注目点は「マンション管理計画認定制度」
国交省の調査によると、2月中旬時点で「4月1日までに同計画を作成する」としたのは、回答のあった区市や都道府県の5%程度の45。30%弱が計画作成の意向は持つが、時期は「24年度以降」など、かなり先の場合も。
この認定制度は「適切な管理を促し、管理の良いマンションが中古市場で評価されること」などを目的に創設。住宅金融支援機構も4月、認定マンションへの住宅ローンの金利優遇を始める。
しかし、準備時間の用意など自治体によって開始時期がまちまちになっていることもあり、「場合によっては2年以上も開始時期が異なるのは普及にはマイナス」(コンドミニアム・アセットマネジメントの渕ノ上弘和代表)という指摘も。制度普及には自治体だけではなく、国の一段の関与も求められる。──と日経電子版の記事は締め括っている。
内容については、2019年に先駆けて改定された「 [長期修繕計画作成および修繕積立金のガイドライン](https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001425184.pdf) 」に添った“マンションの長期修繕計画の作成や見直し”が求められるとされている。このガイドラインの改定は、長期修繕計画が13年ぶり、修繕積立金は10年ぶり。
長期修繕計画のガイドライン改定のポイント
改定のポイントは3つ
1.2つの「期間」の見直し
長期修繕計画の「期間」→「25年以上」から「30年以上」へ
26年目以降の資金ショートを回避するため
見直しの「期間」→「随時」から「5年程度」へ
2.「修繕周期」の見直し
大規模修繕の適切な周期を「12年」から「12〜15年」へ
一定の幅を持たせて明記
長期修繕計画の30年間の計画期間中に2回の大規模修繕を入れることを想定
3.「社会的要請」を踏まえた追記
マンションの省エネ性能を向上させる改修工事の有効性= 脱炭素社会に向けた取り組み
エレベーター点検の有効性=人命に関わる設備のメンテナンス
長期修繕計画のガイドライン改定のポイント
1.修繕積立金額目安の「計算式」の見直し
「世帯あたりの積立金」ベースから「会計ベース」へ
管理組合の収支実態に即した計算式に変更された
2.積立金の「単価」の目安額の見直し
84事例から算出されていたものから366事例へ
金額は前ガイドラインから1.2〜1.6倍に増額
今後のインフレも考慮に入れる必要が
現状について
実際に私が関わっている東京都内の管理組合でも、長期修繕計画の作成が理事会の議題になり、分譲管理会社に発注されたケースがある。
予算的には50万円以内という程度で、書式を当てはめたものになるようだが、該当区域の自治体の対応も不透明で、作成された長期修繕計画がこの改正法とどう紐付けされて運用されるのかは不透明。
あまり性急に準備する必要もないのではという理事の意見もあり、こうしたことがこの改正法の施行に影響しているとも感じた。
組合員への影響について
管理組合組合員(オーナー)への影響は、資金ショートを回避するための修繕積立金額の引き上げが考えられる。
グラフで赤字になる予想を見せつけられると、値上げ議案を総会にかけたくなるが、資金繰りについてはいろいろと案もあるので、慎重に検討したい。
特に修繕積立金は年度ごとの支出の増減幅が大きく、工期を1年ずらすだけでも資金計画は変わる。また、健全な管理組合運営をしていれば、借入も可能。実際に私が関わっている2つの管理組合で、住宅金融支援機構からの借入を前提とした「マンションすまい・る債」を導入/検討している。
マンションすまい・る債 https://www.jhf.go.jp/loan/kanri/smile/index.html
自治体からの方針通達が出されるころに、こうした支援体制も整ってくることが予想されるので、あまり先手を打っておかなくてもいい施策なのではないか、というのが個人的な感想。