マスコミが煽っている「マンション標準管理規約改正」の真意はどこに?

 

4857587948_71c774ed78_m Animagic 2010 – 39 by Shigeako

 

 

6月にも実施されるとしてにわかに注目されているのが新たな「マンション標準管理規約」です。

 

この改正案は3年ほど前から検討が始まり、一時は棚上げ状態になっていたもの。

 

それが2015年3月にいきなり検討会が再開され、報告書をまとめて実施に向かったというので、メディアも「なにかあったんじゃないか?」と浮き足だったようです。

 

勘ぐられているのは相続税改正との関連。

 

東洋経済 ONLINEでは「セレブを狙い撃つマンション規約改定の衝撃」と題して、人気のタワーマンションが相続税の節税に活用されていること、上層階と下の階との格差が大きいことなどを理由に、「改定マンション標準管理規約」で削られることが予想される「コミュニティ条項」に結びつけて論じています。

 

 

また、Sankei Bizでは、「マンション管理新規約で組合激震か 役割否定…国交省方針に業界など猛反発」と題して、こちらもコミュニティ条項の削除をいろいろな観点から推論。

 

 

そもそも、マンション管理と自治の問題を混同しているところに、記者の表層的な理解が見えてしまって、がっかりな内容になっているのですが、もしそれが読者の共感を得られるという判断で書かれているのであれば、マンション管理に対する一般的な認識がその程度でしかないことを浮き彫りにしたということになるでしょう。

 

マンション管理組合は、管理に限定した権限を広げないようにしてきた経緯があります。それは、所有権がらみで解決の難しい近隣問題を複雑にしないようにとの配慮からだと推測され、合理性のある判断だと思います。

 

一方で自治は近所づきあいを含む、範囲が曖昧になりがちなテーマです。

 

“管理”という言葉に過剰反応するマスコミの理解度の浅さ

 

管理を目的とすることで合意を得て、法的な収納強制力もある管理費・積立金等から自治に関する支払い(町会費への出費)を認めない法的な見解も、当然と言えば当然です。

 

町会費の支払いがすべての町民(村民)に義務でないにもかかわらず、支払いの義務があるマンションの管理費・積立金からこれを支出するのは矛盾しています。

 

マンションにおける自治会活動については、町会への参加ではなく、独自に自治会を起こしてもいいという方向へ向かっています。つまり、地域の町会の一部ではなく、そのマンション自体を町会としてしまうという考えです。

 

もちろんこれには他の町会との連携問題も考えなければならなくなりますが、それは地域の全体で考えるテーマであり、マンションの個々の問題からは離れることができます。

 

すでに都市部でも限界町会が増えているというところで、マンションを巻き込んで財政的に少しでも問題を先送りしようという「マンションのコミュニティの問題」については、「マンション標準管理規約」とまったく別の次元で考えなければいけない問題であるはずです。

 

どちらの引用記事も、論点があっちに行ったりこっちに行ったり……。それだけナーバスで難問であることがうかがえるわけですが、こうしたことで第三者管理というもっと大きな、もともとこの権限範囲の規定で止まっていたはずの検討会の内容がぼかされた感じがしています。

 

「マンション標準管理規約」は、マンションにおける管理の憲法とも言うべき大切なもの。もう少し丁寧な解説と、余談のない資料の提示をメディアにはお願いしたいものです。