脱法とは言わせないための違法貸し部屋対策

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国土交通省から「違法貸しルームへの対応について」という文書が通知されたのでシェアします。

文書のリンクはこちら

⇒ 「違法貸しルームへの対応について ~ 居住者・区分所有者・管理組合のみなさまへ ~」

 

内容は…

 

1 違法貸しルーム問題とは
2 行政の対応(情報提供のお願い) ※「特定行政庁 連絡先一覧」を添付しています
3 マンションの区分所有者のみなさまへ
4 管理組合のみなさまへ
(1)専有部分の改修についての対応
(2)ご相談いただいた案件についての特定行政庁の対応
(3)専有部分の改修計画が建築基準法に違反する場合の対応
5 管理規約などの規定について

となっています。

詳しくみてみましょう。

●違法貸しルーム問題とは

マンションの一住戸を簡単な壁で小さな空間に区切る等したうえで、入居者
の募集を行い、多人数に貸し出す物件が見つかっています。こうした物件は建
築基準法において「寄宿舎」に該当しますが、建築基準法に適合しない改修(間
仕切り壁が燃えやすい材料でできている、窓がない、天井高の不足など)が行
われ、火災等安全面で大きな問題のある事例が多く見受けられます。

メディアなどで脱法ルーム、違法ルーム改造などと呼ばれているマンションのリフォームをさしています。

これまでこのようなリフォームをして貸出をしている会社は「これは“部屋”であるから管理規約はおろか建築基準法にも抵触しない」という態度をとっていました。

管理組合としては、規約に「リフォームは管理組合にその旨と内容を届ける」等の条文があれば、これを監視することはできましたが、届け出と違うリフォームがなされていることを知っても、それを是正する手立てがないというのが実情でした。

これに対して国交省は、小さな空間に仕切ることは単なる室内のリフォームとは言えず、「寄宿舎」として扱いますよ、そうなるとちゃんと建築基準法を守ってくださいね、と警告を発したというわけです。

管理組合にとっては、行政が動いてくれる“御旗”を手に入れたわけですから、問題が起きているマンションにとっては朗報といえるでしょう。

 

●行政の対応(情報提供のお願い)

国土交通省及び地元の自治体(以下「特定行政庁」といいます。)の、建築
指導担当部局では、1のような建築基準法違反の疑いのある物件について、情
報を収集しています。このような物件をご存じであれば、居住者・区分所有者・
管理組合、そのいずれを問わず国土交通省又は特定行政庁の建築指導担当部局まで情報をお寄せください(別添「特定行政庁 連絡先一覧」参照)。
いただきました情報をもとに、特定行政庁は、立入調査などを行い、建築基
準法違反が判明した場合には、建築物の安全確保のために、所有者や事業者等
に対して是正指導を行うこととしております。

ということなので、とにかく「違法貸しルームなんじゃないかな?」と思ったら、連絡先まで知らせてくださいと呼びかけています。

専有部分の問題なのでなかなか管理組合の権限では対処できなかった事例ですが、これによって管理組合だけで対処しなくても済むので、とにかく相談してみてはいかがでしょうか。もちろん、相手は区分所有権を有した管理組合員ですから、交渉の前面には管理組合(理事長)が立たなければなりませんし、行政に丸投げするのではなくきちんと前面に立つべきでしょう。

 

●管理組合のみなさまへ

(1)①専有部分の改修などを行おうとするときのマンションの区分所有者から
の改修計画承認の申請などにより、違法貸しルームへの改修の疑いがあるこ
とを把握した場合や、②マンションの一住戸に出入りしている工事業者にその住戸内での工事内容を確認し、違法貸しルームへの改修の疑いがあること
が把握できた場合などには、管理会社等と相談の上、特定行政庁の建築指導
担当部局までご相談ください。その際、改修計画の図面を入手したり、関わ
っている建築士・建設業者等の名称を把握しているときは、あわせてお知ら
せください。

なお、ご相談いただいた方の氏名などが、ご本人の同意のないまま、特定
行政庁から第三者に伝わることはありません。

一般的にマンションの1室をリフォームするだけであれば建築確認等の届け出や検査は必要ないために、行政がその動向を把握するのはまず無理でしょう。

なので、同じ階の住人などからの「どうも壁を多く作ったりしていてへんな部屋になってるよ」などという情報が管理組合に入ってきたときに、それを確認するとともに、特定行政庁の窓口まで知らせてほしいという内容になっています。

(2)ご相談いただいた案件について、特定行政庁は、必要な調査等を行った上
で、違反の有無等に係る情報を適宜提供することとしております。
建築基準法違反の有無に係る情報は、専有部分の改修の承認又は不承認を
決定するに際して重要な要素となりますので、特定行政庁から情報提供され
るまで承認又は不承認の決定を保留することができます。
また、特定行政庁から情報提供されるまでの間の折衝経緯については、申
請者との対応に必要となりますので、その内容を記録しておくことが大切で
す。

管理組合の対応としては、警告文などによって「管理組合が承認した内容と異なる改修をしていると思われるので、○○○号室に対する改修許可を取り消して、内容を精査するために保留する」というような文書を相手方に送り、掲示しておくなどの処置が必要でしょう。国土交通省は、そのような対処をしてもいいですよと言っているわけです。

(3)提出された図面などにより、改修計画について建築基準法に違反するもの
である旨の情報が特定行政庁から提供された場合には、専有部分の改修を不
承認として差し支えありません。

リフォームの計画が管理組合に提出されて、その図面の内容がどうも違法貸しルームではないかとも思われた場合に、窓口に相談しているあいだは不承認としてもいいですよという意味の内容です。

これは、これまでこうした事例で法令違反が明らかになってからの事後取り消しという手順になっていたものを、最初から不承認にしていても「ただのリフォームなのに承認しないのは管理組合の職権乱用」だなどと反訴されないで済みますよということを漂わせています。

 

●管理規約などの規定について

専有部分の改修についての承認規定を持たない管理組合については、管理規
約にこの規定を定めることにより、早期の対応、トラブル防止にも役立つこと
となります。
また、承認規定をもつ管理組合についても、管理規約や細則に改修計画の建
築基準法等の法令違反を不承認事由と定めておくことにより、今後のさらなる
トラブル防止にも役立つこととなります。

こうしたトラブルに迅速に対処するためにも、管理規約にリフォームに関する条項を入れておいたほうがいいですよ、という内容です。

国交省は簡単に言ってくれますが、管理規約を改正するには特別決議が必要になるなど、管理組合にとっては負担も大きいので、できれば行政指導など早い段階で動いてくれる体制を整えておいてほしいところです。

管理規約云々を言っているのは、裁判になったときに“マンションの憲法”である管理規約にちゃんと記されていて、それに反した行為であることを図面などで証明すれば、判決の大きな要因になるためです。

 

なお、連絡先の窓口については、次のような振り分けがあります。

○東京都23区内「マンションの延べ面積が1万㎡以下の場合」⇒各区役所の窓口

○東京都23区内「1万㎡を超える場合」⇒都の窓口

○市が特定行政庁に指定されている場合⇒その市の窓口

○市町村が特定行政庁に指定されていない場合⇒都道府県の窓口

 

相談窓口の具体的な名称と電話番号はリンク先のPDFに記されていますが、それぞれの都道府県庁・市役所・区役所の代表電話にかけて「違法貸しルームの件で相談があるのですが」と言えば、担当部署につないでくれると思います。

いずれにしても、専有部分が絡んでいる問題なので、管理組合の自力救済は難しいと思われる事例です。行政と連携して早めに対処していくことが重要でしょう。

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