フランス発ビアジェという終の住処は日本でも可能なのか?

少し前に、たぶんTV番組で知ったのが「ビアジェ」というシステム。

ビアジェとは

ビアジェは、フランスの特殊な不動産売買契約のこと。

その歴史は古く、ローマ時代すなわち帝国下にあったころからの商習慣で、フランス民法典にも記してある歴とした制度ということです。

その概要は、高齢者が所有不動産を売却、売主は買主から初期費用と、生存期間に限り一定額の定期支払金を受け取り続け、かつ、売主は売却物件に住み続けられる──というもの。

売主の高齢者は、生きているかぎり一定額の収入と住み家が保障されます(別の場所に住むこともできる)。

一方の買主にとっては、売主への支払いが短期であれば(つまり売主の死期が近ければ)相場より安価に不動産を取得することができます。

しかし、売主が長生きすれば、取得費用がかさんでしまうというリスクを伴います。

日本人が見ると、かなり投機的な制度と思われますが、これは投機でも、もちろん詐欺的な取引でもないとのこと。

それを担保しているのがフランスの法制度。国の認可を受けた公証人が、権利関係の複雑なこの契約を取り仕切ることで、安全な運用を可能にしています。

日本ではリバースモーゲージ

日本では、1981年に東京都武蔵野市が「高齢者の所有不動産(持ち家)を担保に、毎月一定額の融資をするという制度を始めました。これがリバースモーゲージと呼ばれるものです。

2020年には、厚生労働省が「長期生活支援資金貸付」(リバース・モーゲージ)として全国に導入し、社会福祉協議会が運営するほか、金融機関でもサービスを展開しています。

ビアジェとリバースモーゲージの違い
フランスでは、ビアジェの取引が全不動産取引の1%を占め、60歳以上の人口が全人口の1/4になる2020年以降はさらに増加すると見込まれています。

一方の日本では、公的リバースモーゲージの場合には低所得であることが条件になるなど、福祉施策的な側面が強く、利用のハードルが低いとはいえないのが現状です。

民間のリバースモーゲージでは逆に、担保不動産の土地評価額の最低ラインがあるなど、富裕層向けの老後資産の運用選択肢のひとつになっているようです。

まとめ

ビアジェでは、契約時に定期支払金の金額と支払期間が決められます。

これは、土地を担保として余命を計数化した死亡保険の分割払いと考えられます。

日本のリバースモーゲージの場合、公的機関では年金の上積み(土地を担保とした国民年金基金でしょうか)、民間では単純に仮想資産売却による貸付であることが読み取れます。

貸付であるからには、担保価値の査定は厳しくならざるを得ず、今後の日本の不動産価格の推移を考えると、必ずしも良い条件の制度にはなりえないかもしれません。

貸し付けであれば、不動産の価値を契約時に100%活かす余地がないのも痛いところ。

不動産の買い換えや、相続税対策など、優先させるべき項目はあるはずなので、信頼できるエージェントを見つけるところから始めることをお勧めします。