「受水槽に入水した」というシャレにならない事件に学ぶマンション受水槽対策

「受水槽入水事件」の概要

このところTVのワイドショーを賑わせている話題に、「マンションの受水槽で泳いでいる動画がアップされて炎上」というものがありますね。

これは、6月13日にショート動画配信アプリにアップされた動画で、住人の飲料などに用いる水をためた受水槽のなかに入った男性が下着1枚で泳いでいるところを撮影したもの。

場所は福岡県志免町のマンション、昨年9月に行なわれた受水槽の清掃点検中の出来事、ということが判明しているようです。

「受水槽入水事件」の経過

このマンションの管理会社「大和ハウス工業の子会社」は11日にこの動画を把握し、調査を開始。このマンションの住人には飲料水を配って謝罪したそうです。

謝罪はともかく、昨年の9月に起きているトラブルに対していま水を配ってどうするかという気もしますが・・・。

警察に被害届を提出して捜査が進められるようですが、これって管理会社の被害としてなのか、マンション(管理組合)としての被害なのか、ニュースではそのへんが曖昧です。

往々にしてメディアの報道では、マンション管理の原則を理解していないような文面が多く、これもその例に入るものかと思います。

受水槽とは?

受水槽とは、建築物内で使用する水を貯留する設備のひとつで、ほかに高置水槽、貯湯槽などがあります。

受水槽の役割は、高さのある建物で上階へ給水するために、その前段階として水道本管からくる水道水を貯めるというものです。

受水槽に貯められた水(あるいはお湯)は、ポンプなどで直接各階へ送られたり、屋上などの高置水槽などへ送ってから給水されたりします。

受水槽の管理

マンションの受水槽は、マンション敷地内に設置されるので、原則として水道管本管とは異なり、そのマンションに管理責任があります。

この責任とは、水道法上の「簡易水道」に該当するもので、マンション所有者(管理組合)が恣意的に乖離できるものではありません。

「簡易専用水道」の設置者には、常に安全で衛生的な飲み水を確保するために正しい管理を行い、定期的に検査を受ける法的な義務が生じます。

水道法施行規則第55条には、1年以内ごとに1回の貯水槽の清掃と厚生労働大臣の登録を受けた簡易専用水道検査機関による水質検査が必要になります。

今回の事件は、この定期清掃に際に発生したものと思われます。

なお、水質検査は指定機関に依頼する必要がありますが、清掃に関しては「専門的な知識、技能を有する者に行わせるのが望ましい」とされるものの、実務担当に関する規定は特にありません。

まとめ

受水槽は、定期的に清掃することが前提になっているため、頑健であると同時に、内部に入りやすい構造にもなっています。

一部のテレビ報道では「頑丈に見える設備の大きなナットを外して」などというトンチンカンなコメントをするキャスターもいたようですが、実際の受水槽は進入口があり、施錠での管理はされていますが、こうした検査・清掃がしやすい構造になっています。

それだけに、これまでも小動物が侵入したり、死体が浮かんでいたりということもあったようです。

いずれにしても、マンション住人のライフラインである上水道の管理という意識をもつことで、管理する管理組合側も依頼される管理会社やその外部委託会社にも、こうした「生命の安心・安全に関わる事件」が発生しないようにするための注意喚起を行なうしかない、というのが限界なのではないでしょうか。

山に登る人は、下流でその水を飲む人がいることを考えて水際では用を足すなという教えを、先輩からたたき込まれます。

あたりまえをあたりまえとせず、常に確認をする業務体制を整えることも、こうしたリスクへの対応として有効でしょう。

この事件、損害賠償にまで発展する可能性が示唆されていますので、どうせ洗ってきれいにするのだからと「気持ちいい~!」と遊んでしまった代償は大きなものになるかもしれません。