マンション共用部分の保険(マンション総合保険)に関する基礎知識

 

マンション管理組合の大切な仕事のひとつに
保険契約というものがあります。

分譲マンションにはそれぞれにオーナーがいる
専有部分とオーナー全員の持分がある
共用部分があります。

専有部分の管理はオーナーが行なうので、
その保険契約もそれぞれのオーナーに
任されます。

しかし、分譲マンションの共用部分を
管理しているのは管理組合です。

従って、共用部分の保険契約も
管理組合が行なうことになります。

共用部分の保険とは?

分譲マンションでは、前述のように
管理責任が専有部分と共用部分で
異なります。

管理責任が異なるということは、
専有部分のためにしていることが
共用部分には適用されないという
ことを意味します。

つまり、専有部分で保険の契約を
していても共用部分には適用されない
というわけです。

共用部分は誰のものでもないわけではなく、
そのマンションの所有者全員が
それぞれの持分に応じて所有権を
主張できるものです。

このことを考えると、
共用部分の保険契約も、
専有部分の保険の持分に応じて
適用されてもよさそうなものですが、
そうはいかないのです。

従って、共用部分の保険は、
共用部分を管理する管理組合の
名義で別に契約する必要があります。

共用部分の保険の内容

戸内の水漏れや設備の故障は
オーナーが加入すべき保険で
まかなわれなければなりません。

しかし、共用部が原因の被害が
戸内に及べば、管理組合加入の
保険の適用になります。

このほか、共用設備の不備はもちろん、
マンション外壁や付属物などの落下で
通行する人や物に被害を与えた場合
などでも管理組合の保険適用になります。

被害が発生した際に保険への加入がないと、
損害補償をすることができません。

そしてもちろん、加入していなかったことを
理由に保証を免れることはできません。

つまり、保険に加入していれば保険金で
補償を住ませることができたのに、
保険に加入していなければ管理組合自身が
自腹でその対応と補償をしなければならないのです。

そうしたリスクを負わないためにも、
マンション管理組合の保険加入は
必要不可欠なものです。

マンション共用部分の保険の種類

マンション共用部分の保険は、
一般的には損害保険と呼ばれるものです。

内容としては、火災保険を軸として
特約を付けることになります。

火災保険では、マンション共用部に起こりうる
リスクから財産を守る契約になります。

マンション共用部に起こりうるリスクとは、
火災や自然災害による被害に加えて、
外部からの衝突・設備不良・暴力行為など
による被害や盗難・破損・汚損
といったもの。

こうした被害による損失を補償するのが、
火災保険ということです。

特約として、復旧時や調査、片付け
などに掛かった費用の補償を付ける
こともできます。もちろん有償です。

賠償責任保険には2つの種類があります。

建物管理賠償責任補償特約(施設賠償責任補償特約とも)
は、マンション共用部分が原因で起きた事故、
共用部分に関する業務などで起きた事故
に対する補償が目的となります。

もうひとつは個人賠償責任補償(包括的)特約で、
マンション内で起きた通常の自己などに対して
補償するものです。

地震保険は、火災保険の対象とはならない
地震が原因の損害を補償するものです。
つまり、火事でも失火は火災保険対象ですが、
地震の場合には地震保険も付けていなければ
補償されないことになるので注意が必要です。

値上げが続くマンション共用部分の保険料

マンション共用部分の保険がクローズアップ
されている理由のひとつに、毎年のように
支払保険料が値上げされていることを
あげることができるでしょう。

管理組合の通常総会に計上される保険料は
決して少ない金額ではありません。

それだけに、毎年のように値上げされていると、
否が応でも目立ってしまうと言うわけです。

なぜそんなに値上げをしなければならないのか。

それはもちろん、保険金支払いが増えて、
保険会社の負担が増えているからです。

マンション共用部分の保険は火災保険が軸
と説明しましたが、実は補償対象となる
事故の内容は火災よりも漏水が圧倒的に
多いのです。

この背景には、建物の老朽化が大きく
関係しています。

火災も、漏電など老朽化が原因のものが
あるものの、目立って多くなることは
あまり考えられません。

共用部分で火災を起こす可能性がある
設備が少ないという事情もあるでしょう。

一方、給排水管は共用部分がメインとなり、
メンテナンスも難しいために老朽化が
放置されているケースが多いのです。

マンション共用部分の保険を決める際の注意点

マンション共用部分の保険では
次の点に注目してください。

まず、契約内容と保険適用範囲が適切か、
特約は適切か、補償金額が足りているか、
割引できる契約オプションがないか、
などです。

契約内容については、共用部分をすべて
網羅していないと、思わぬ対象外の部分で
保険が適用されないなどの事態を招かない
ようにしなければなりません。

名義も正しく管理組合理事長になっているかを
チェックしておくべきでしょう。

特約では、高台なのに水害が付けられたまま
だったりすると不要な保険料を払わなければ
ならなくなります。

補償金額については、再調達できるものか、
修理ができればいいのかなど、管理組合
によっても考え方が変わってくるでしょう。
もちろん、それによって支払保険料も
変わってきます。

保険に頼るのか、修繕積立金としてプール
しておくのか、管理組合内での意見調整を
しておくべきです。

保険料の割引については、免震などがあれば
地震保険が対象になります。

契約期間では、1年ごとの契約ではなく
5年などの長期一括払い契約にすれば、
1年より支払保険料が削減できる場合があります。

受取人が区分所有者になる特約も、
場合によっては外すことを検討しましょう。

個人的にポイントだと考えているのは、
付保率のチェックです。

付保率は、再調達価格すなわち全焼の場合に
建て直す価格に対して補償する割合。

これが契約書には小さく書いてあったり、
総会資料に添付される領収書のコピーには
なかったりするので、要注意。

付保率が100%なら再調達価格として認定
された契約内容の全額が補償されるわけですが、
50%なら半分しか支払われません。

しかし、その分の支払保険料が安く済むという
メリットもあるのです。

相見積もりなどを取る場合に各保険会社は
なるべく支払保険料が安く見える見積もりを
出そうという作戦で臨んでくるわけです。

管理組合側はなかなか保険内容を見抜く
経験者が少ないので、つい安い見積もりを
選びがちですが、その安さには付保率が低い
からといった理由がちゃっとあるのです。

付保率は100%のほうが安心できそうですが、
コンクリート造のマンションで全焼という
ケースがそうそうあるわけではないことも
考慮しなければならないでしょう。

それと同様に、地震保険の必要性や、
水害の可能性なども、その立地条件を
勘案して検討すべきです。

立地条件などは、役所にハザードマップが
備えているはずですので、ぜひチェック
してみるようにしてください。

まとめ

分譲マンションでは、各戸はそれぞれの
オーナーが加入する保険、共用部分では
マンション管理組合が加入する保険に
分かれています。

共用部分が原因の損害を補償するために
マンション管理組合は保険に加入する
必要があります。

なぜならば、その損害が発生した際に
マンション共用部分の保険加入がないと、
莫大な補償費用を修繕積立金等から
拠出しなければならなくなるからです。

そうしたリスクに対処し、少しでも負担を
減らすには、次のような点に留意しましょう。

まず、保険の契約期間を最低の1年ではなく
保険料割引のある5年程度に伸長します。

マンション共用部分の保険の最長は5年です。

専有部分の賠償責任保険に加入している
戸数が多ければ、個人賠償責任補償特約を
下げたり、外すことも考えましょう。

ハザードマップ等で調査して、必要のない
特約を外しましょう。

付保率を調整して、そのマンションの財務や
築年数などの状態に見合った支払保険料を
割り出せるよう保険会社と交渉しましょう。

私の経験でも、相見積もりは金額だけでは
比較できない場合が多くありました。

また、組合員には付保率50%を考えていない
人も多くいることは確かです。

それほど多くない項目をちょっと調整する
だけでも保険料はかなり変わってきます。

また、安心のために最低限の責任を果たす
という目的も果たすことができるはずです。

冒頭でも述べたように、マンション共用部分
の保険料は毎年のように値上げされています。

ポイントを押さえた比較表を作っておくだけでも、
支出を減らしながら安心を買うことができるので、
ぜひ先延ばしにしないで検討してみてください。

参照:知らないと損する!分譲マンション共用部分の火災保険見直し|DIAMOND ONLINE

参照:マンション管理組合の火災保険について