東京都では「マンション再生まちづくり制度」を創設して建替えの後押しを始めました

 

東京都は、2017年3月30日付で「東京都マンション再生まちづくり制度の創設について」を公開しました。

 

 

東京都マンション再生まちづくり制度の意図

この制度は、現行の法制度では建替えが難しいとされるマンションについて、都が地区を指定することによっていわゆる特例を作り、建替えを可能にするもののようです。

背景には、都内に約35万戸あると推定される旧耐震のマンションの建替えを進めたいということがあります。

この制度が必要なのは、建築時には適法で建築確認も出ていたマンションが、その後の法改正や道路整備などによる敷地の改変などで「既存不適格」となってしまったものを救済しようということを主眼にしていると考えられます。

都心部ではワンルーム規制などで、多くのマンションが既存不適格建築物になっていることが考えられます。

具体的には、1戸あたり20平米で建てたマンションは、25平米以上というワンルーム規制ができたことによって「同じ戸割り」では建替えられなくなります。

そうなると、老朽化によって住宅としての機能を果たせなくなっても(もしくは資産価値が著しく下がっても)、建て直して再生するという道がとれなくなります。同じ広さの間取りが確保できないということは、単純に区分所有者の頭数だけの個数を確保できないことを意味するからです。

旧耐震のマンションでは、容積率や建ぺい率の改正などでこのパターンに当てはまるケースが多いと考えられます。

 

東京都マンション再生まちづくり制度の内容

この制度では、まず区や市によって「まちづくり計画」が必要であることが認められ、その申請によって都が地区を指定するところから始まります。

地区として指定されるには、旧耐震のマンションがあって既存不適格になっていて、周辺と一体化して建替えが必要であることなどの要件を満たす必要があります。

「マンション再生まちづくり推進地区」として指定されると、この計画に対して都から費用の一部の補助などができるようになります。事業費の最大1,000万円/年のうちの半分を5年間、都が補助するというので、500万円×5=2,500万円。

この地区指定が行なわれてから、当該マンションの管理組合において建替え等の合意形成が行なわれることになります。地区に指定されたからといって代執行のように勝手に建替えるわけにはいきませんので、所有者の同意が必要になります。ガイドラインには明示されていませんが、区分所有法の建替え決議に基づいて進められると考えられます。

この合意が形成されると、まちづくり計画を取りまとめた区や市がその建替え計画を認定し、マンション建替え事業が実施されることになります。

なお、建替え等に関する管理組合の合意形成に必要な費用の一部も、この制度で補助されます。金額は最大で事業費補助と同額の5年で2,500万円です。

 

まとめ

既存不適格のマンションは多く、実際には建替えは無理だと考えられていました。行政も勝手にあとから(安全を考えたからとはいえ)不適格として、建替えの障壁となっていたことを考えると、ようやく動き出したかという感じでしょうか。

ただし、既存不適格のマンション単体での建替え事案では計画策定は難しいようで、ある程度のまとまった範囲で協力して進めなければならないなど、ハードルは決して低くはないようです。

周囲のマンションが同様に建替える意向があるのかなど、温度差もあるでしょう。

同意形成に関しては、都はもちろん、区や市も「所有者の意志」を尊重するスタンスを崩さないと思われます。つまり、関知しないということです。

管理組合の負担はかなり大きいものと考えられますが、それでも既存不適格の建替えをちょっとだけ前進させるエピソードだと言えます。