国土交通省の民泊への見解は「規約の改正が必要」

 

4131646037_e2dd004d29_m Rhianne by Elena Kalis

 

2015年12月22日の定例会見で石井国土交通大臣が明らかにしたところによれば、国家戦略特別区域法に基づく民泊いわゆる特区民泊では、標準管理規約では要件を満たさず、管理規約の改正を必要とするという見解を示したそうです。

これはまあ、標準管理規約では専有部分を原則的に住宅使用としてしか認めていないので、当然の見解でしょう。特区なので、これを超えた見解(いわゆる超法規的措置)があるという幻想が潰えたというわけです。

国交省によれば、標準管理規約を一部でも採用している分譲マンションは全体の8割になっているとのこと。

 

管理規約改正よりハードルの高い資産価値への関心

管理規約改正は、総会で区分所有者の4分の3以上の賛成による議決が必要です。これは一般的にけっこうハードルが高いとされているようですが、実際に管理組合にかかわってみると、それほど高くはないというのが実感だったりします。

というのも、総会はほとんどが 議決権の放棄。議長である理事長の意向に従うという管理組合が多いと思います。なので、総会の開催さえできれば、4分の3以上という特別決議であっても、わりとすんなり通っちゃうという認識なんですね。

 

それよりも問題は、民泊がマンションに及ぼす影響を心配する声が日増しに大きくなっていること。

通路で騒ぐ、大きい荷物でエレベーターや玄関を占領する、ゴミを散らかすなど、住民にとって民泊はメリットどころかデメリットばかり。神経質な組合員でなくても眉をひそめるというのが、現状ではないでしょうか。

 

国交省の説明で足りないのは、民泊の推進と権利が入り組んでいる分譲マンションを分けずにこの特区を推進しようとしているところ。

区分所有法が適用されない単独オーナーのマンションでは、管理規約自体が存在しないのでオーナーの意向次第で民泊に協力しようがしまいが自由です。むしろ、空室対策としては率先して参加いたいのが本音でしょう。

しかし、分譲マンションでは利用形態がそれぞれ異なり、従来の利用方法を毀損する新たな方法は、受け入れがたいものになるはずです。

その齟齬に気付いて、管理規約の改正を持ち出したとも思えるこの見解表明。

理事長が賃貸推進で空室に悩んでいるなら、さっさと管理規約を改正してしまうかもしれませんが、居住者が理事を担っていることの多い管理組合の実態を考えると、この民泊特区は矛盾が多いように思います。

 

敢えて考えれば、リゾート・マンションなどで居住者がほぼいないという状況であれば、活用できないこともなさそうですが……。

どうなるか、注視したいと思います。