マンションの修繕積立金はこう決めておきなさいと国交省が言っている

 

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マンションの修繕積立金とは、修繕工事を実施するときに負担するために区分所有者から預かっておくお金のこと。

 

大規模修繕工事などを実施すると多額に費用を要するため、あらかじめ計画的に積み立てておく必要があるとされています。

 

これについては、標準管理規約に「区分所有者は、敷地及び共用部分等の管理に要する経費に充てるため、次の費用(以下「管理費等」という。)を管理組合に納入しなければならない。」と定めて、管理費と修繕積立金を徴収することを義務づけています。

 

その金額については、「各区分所有者の共有部分の共有持ち分に応じて算出する」としていますが、なにを基準にして計算するかまでは言及していません。

 

こうした負担金は、マンションの購買時のハードルを上げてしまうので、えてして最初は低く抑えて売り出されることになります。基準が定められていないために、極端な話ゼロ円であってもいいわけです。

 

しかし、修繕のための積立金がまったくない状態だと、10年20年と経つうちに建物の各所に不具合が出てきて、それを修理するのに多額の修繕金が必要となり、どうやって支払うのかが問題になってしまいます。

 

その都度、徴収すればいいという考え方があるかもしれませんが、いくら戸数で頭割りするからといっても、いきなり数十万円の修繕負担金を徴収されるのではたまりません(実際には総会に議案を上程して、その承認の後に徴収という流れになりますので、話が持ち上がってから半年から1年以上は期間が必要となるでしょう)。

 

出費の話となるとまとまらないのが世の常。マンション管理組合でも例外ではありません。

 

修繕をしてマンションをよい状態に維持する必要性は理解できても、なかなか懐が痛む話には乗れないというわけです。

 

しかし、劣化は待ってはくれません。計画的に修繕されたマンションが美観や機能を維持するのに対して、それが行なわれないマンションでは明らかに環境悪化が早く進行してしまいます。

 

こうした悪い循環に陥らないためにも、計画的な修繕金の徴収・積み立てが必要になる、ということです。

 

では、少しずつ積み立てておけばいいと言われても、実際にはどのぐらいの額が適当なのかを知っておきたいですよね。

 

それについては、国交省が「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」というのを作って発表しています。

 

これによると、国交省が見積もった専有床面積当たりの修繕積立金の額に、各戸の専有床面積を掛けて算出するようにしています。

 

専有床面積当たりの修繕積立金の額は以下のとおりです。

 

建物の階数/建築延床面積

平均値

事例の 3 分の 2 が包含される幅

【15 階未満】

5,000 m²未満

218 円/m²・月

165 円~250 円/m²・月

5,000~10,000 m²

202 円/m²・月

140 円~265 円/m²・月

10,000 m²以上

178 円/m²・月

135 円~220 円/m²・月

【20 階以上】

206 円/m²・月

170 円~245 円/m²・月

 

なお、機械式駐車場が設置されている場合には、これに機械式駐車場の機種に応じた修繕工事費の目安から割り出した金額をプラスします。

 

機械式駐車場の1台当たりの修繕工事費は以下のとおりです。

 

機械式駐車場の機種

機械式駐車場の修繕工事費の目安
   (1台当たり月額)

2段(ピット1段)昇降式

7,085 円/台・月

3段(ピット2段)昇降式

6,040 円/台・月

3段(ピット1段)昇降横行式

8,540 円/台・月

4段(ピット2段)昇降横行式

14,165 円/台・月

 

これらは、前述のように竣工時の設定があまりに現実とかけ離れていたことから、ひとつの目安として国交省が提示しているもので、これに従っていないからなにか罰則があるというものではありません。しかし、かけ離れた金額しか積み立てていなければ、ほぼ確実に定期修繕に支障が出ることになります。

 

途中から修繕積立金を考え直すときには、この算出方法を目安にしていかに該当物件の修繕積立金が低く(不当に)押さえられていたかという根拠とし、実際に不足している修繕積立金については長期修繕計画などによって必要とされる工事の見積もりを織り込んだ総額から逆算する必要があるでしょう。

 

どのような根拠を示したとしても、一時金の徴収を含めて修繕積立金の値上げや徴収には大きな抵抗があることが予想されます。

 

国交省のガイドラインだけでは説得力が足りないと思われますので、実際に必要な修繕工事を織り込んだ計画書を作成し、それを元に算出した新たな修繕積立金額を提示してコンセンサスを得られるように努力することが、この問題の解決へ導く最善策ではないかと思われます。

 

「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」の概要|国土交通省(PDF)