築50年を目前にして24階建てのタワーマンションに生まれ変わった「建替え成功例」

 

8階建てのマンションが、「マンション建替えの円滑化等に関する法律(円滑化法)」の施工後に初となる“億ション”として生まれ変わったというニュースです。

 

mitasha0 完成予想図(引用:三井不動産ニュースリリース)

 

建替えられたのは東京・三田にあった「シャトー三田」で、竣工は1964年。完成当初から24時間有人管理やアメニティ施設の併設など高級マンションとして注目された物件だったそうです。

 

漏水や電気系統の不備など経年による劣化が目立ってきたことで建替えの気運が高まり、2004年から準備に入ったとか。ちょうど築40年のときなので、高級マンションと銘打ったにしては設備関係の老朽化が早かった気もしますが……。

 

2010年に建替え決議が成立。2014年に24階建てのタワーマンション「ザ・レジデンス三田」として完成しました。

 

建替え決議による建替えの成功事例のポイントとは?

 

「Sankei Biz」の記事では比較できる重要な数字などが欠落して、このニュースの扱いを理解できているのか不安な部分もあります(笑)。

 

ちょっとネットで調べてみたところ、「シャトー三田」は96戸。これに対して、隣接地を合わせることで「総合設計制度」を適用し、最大割増容積率が約215%となって、タワーマンションの建設が可能になりました。そのままの建替えだと400%だったものが、615%まで割り増しされたようです。

 

「ザ・レジデンス三田」は地上24階、高さ79.98メートル。総戸数252戸と大幅に増えて、建設中の時点で完売していたようです。

 

2.6倍に個数が増えたことで、この売却益を建替え費用に充てれば、「シャトー三田」の所有者も負担がほとんどない状態で建替えを経験できたのではないでしょうか。最高額の売り出し区画は約2億7千万円だったとか。

 

建替え決議から竣工まで4年ほどかかっていますが、極めて短いスパンで建替えが実現した事例とみることができるでしょう。

 

しかし、それも建替え後にブランド化が可能な地域や、この「ザ・レジデンス三田」のような億ション仕立てが可能な、個数の増えるケースに限られることも想像に難くありません。

 

都内ではワン・ルーム規制などもあるため、容積率の問題に加えて、建替え前の間取りと同じ建物を建てることができないという問題もあります。

 

記事では、マンションの建替えに関する市場環境が楽観視できない理由として「建築費の上昇による所有者の負担感増」を挙げていますが、建替え計画で収支がしっかりと見積もられていればそれほど心配の種ではないはずだと思います。

 

それよりも、まだまだ「建替えられない」という制度的な理由が多いほうが問題ではないかと思うのですが。

 

限界マンションの管理を強化するだけでなく、建替えを視野に入れた規制緩和など、行政も巻き込んでの建替えミッションの強化が求められていると思います。

 

高級マンションが億ションに生まれ変わることができるのは、ある意味では「簡単なこと」だったのですから、もうちょっと「庶民」のことを考えて、制度を整えていただきたいものです。