マンション専有部分の配管更新を管理組合が行なう理由

 

「マンション管理センター通信」2013年10月号の「大規模修繕工事のタイミング−給排水設備編」という記事が目に止まりました。

 

3096516991_b138257c60_m photo by Skelekitten

 

この記事では……

 

マンションの修繕でいちばん厄介だと思われる配管の問題に言及しています。執筆は、公益社団法人日本建築家協会関東甲信越支部メンテナンス部会員の柳下雅孝氏。

 

この記事で興味深かったのは、専有部分の更新をどうするかについて私見を述べているところ。

 

柳下氏は、「共用部分はしっかり改修してある」が「専有部分は古い配管が残ったままとなっている高経年マンションが少なくない」ことを心配し、標準管理規約第21条2項に「専有部分の設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の管理を共用部分と一体として行う必要があるときは管理組合がこれを行うことができる」とあることを援用して、専有部分の給排水設備更新を一斉にやってみてはどうかと提案しています。

 

以下は、一斉更新の有効性について。

 

1)共用部分と専有部分の配管は一体として繋がっており、同じ材質が使われ劣化の状況もほぼ同じである。

2)各戸に改修の判断を委ねてしまっては、管理が行き届かない。

3)改修しない住戸は、漏れるまでやらない。

4)専有部分の給排水管が腐食し漏水が発生した場合、困るのはその下階の住戸である。

5)配管の老朽化の問題は、全戸共通の課題であり、管理組合で取りまとめたほうが合理的である。

6)専有部分の給排水管の管理や更新といわれても、専門知識を持ち合わせていない一居住者としては、どうしていかわからない。

7)管理組合で取りまとめ全戸一斉に更新したほうが、スケールメリットにより工事費が安くなる。管理組合であればコンサルタントも雇えるので、適切な修繕が実施できる。

8)損害保険はあくまで保険であり、階下の不安を払拭できるものではない。

 

8項目を総会議案書に上程すれば、説得力がありそうですね。

 

専有部分の修繕を修繕積立金等でまかなうのはいかがなものかという意見も出るでしょうが、修繕積立金等も各所有者から提供された資金なので、使い負担ではなく先払い分からの支払という考え方を提案してみてはいかがでしょうか。

 

もちろん、漏水が発生すれば専有部分にのみ被害が留まることが考えにくく、共有部分に影響する修繕の問題としてとらえるほうが現実的という理由もあるでしょう。

 

管理組合負担であれば、借り入れなど(すまい・る債など)で対処することも可能です。管理費・修繕積立金の値上げの難しさを考えれば、借り入れを検討する余地は大きいと思います。