マンション管理組合の総会決議に従おうとしないモンスターを強制撤去する判例について

 

「マンション管理センター通信」2013年4月号の「管理組合が総会決議した電気一括供給契約に反対する組合員が同契約を締結しないことが、区分所有法6条1項違反として、同法59条の競売請求が認められた事例」という記事が目に留まりました。

 

4086303367_acb0a82751_n photo by Murtada al Mousawy

 

この記事は……

 

創価大学法科大学院教授の花房博文氏による原稿です。

訴訟のあった物件は、昭和49年築の5階建て4棟、総戸数125戸の住宅団地で、平成21年に季節電気幹線の老朽化と電気料金8%減額可能という理由で、各戸への電気供給方式を従来の東京電力と各戸との契約からB社による一括受電に変更する旨を総会で決議。

しかし、唯一これに同意しないYに対処するために、これを「共同利益相反行為に該当」するとして、競売を請求して、併せて不法行為に基づく損害賠償を求めたという事案です。

Yは、総会決議に反対する理由として「共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼす場合に当たる」として、これは専有部分の所有者の承諾、すなわち自分の承諾がなければ行なうことができないとしています。承諾しない理由としては、「緊急性がなく、強要できない」「電気代が安くなるといっても品質に不安があり、その契約については個人の責任に委ねられるべき」で総会決議に委ねられるべきものではない、等々。

これに対して、横浜地方裁判所は、「新規契約相手会社の選択方法や、営業上の信用等に不信感がある等を理由に、決議に則った変更契約の締結に協力しない組合員に対して、区分所有権の競売を求める非常に厳しい措置が認め」ました。

地裁は、「総会決議に基づくもの」であることを重視し、理事会側が「事前手続きも周到」だったとしたうえで、今回の受電契約の変更が「一部の区分所有者のみが特別の影響を受けるものではな」く、「各住戸が等しく受けるもの」だから、「Yのみに不利益をもたらす証拠はな」いので、Yが総会決議に反対する理由として挙げていた「共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼす場合」にはあたらないと判じました。

さらに、Yの行為は管理組合運営を妨害する「違法なもの」であり、「不法行為にあたる」とまで言及しています。

滞納訴訟が行なわれる簡易裁判所の現場では、滞納管理費等の金額や決め方まで証拠を提出させられたり、督促等の事前の段階を経ているかなど、かなり提訴側に厳しい状況があることを考えると、この判決は管理組合運営にかなり与したものとなっているように感じます。

一部のモンスター組合員によるトラブルが増えているせいでこうした流れになっているのかもしれません。

結審までどうなるかも併せて、この事案はウォッチしてみたいと思います。