管理組合員から会計帳簿等のコピーを請求されたらどうするか? #マンション管理

管理は区分所有者全員が協力して行なうーーというのが理想です。

しかし実際には、有志の役員に任せっきりというのがほとんではないでしょうか。

ところがときどき思い出したように、「ウチの管理組合ってちゃんと運営されているのだろうか?」と気になっちゃうオーナーがいたりします。

いや、いいことなんだと思います。でも、いきなり疑うように「ちゃんとやってるかどうか確かめてみる権利があるから」と言わんばかりに、帳簿等を見せてほしいと言ってくることがあるんですね。

これに対して区分所有法では…

管理組合法人の財産目録・区分所有者名簿を除き、管理組合法人におけるその他の書類の作成・保管や、法人化されていない管理組合での書類の作成・保管に関する定めを置いていないのです。

ということは、各管理組合の取り決めに従うしかないということになります。

ここで重要になるのが、管理組合運営の“憲法”である管理規約にどう定められているか。

標準管理規約には、「第64条 理事長は、会計帳簿、什器備品台帳、組合員名簿及びその他の帳票類を作成して保管し、組合員又は利害関係人の理由を付した書面による請求があったときは、これらを閲覧させなければならない。この場合において、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができる。」とあります。

多くの管理組合では、この標準管理規約を雛形にして管理規約を作っているので、ほぼこの条文が流布しているものと思われます。

ということは、「組合員又は利害関係人」が「書面」で請求すれば、「閲覧させなければならない」ことになります。その際に、「すぐ見せて」「いま見せて」と言われても、「週末の午後2時なら時間があるから、そのときに見せますよ」という指定をすることは許されています。すぐ見せないからと言って、「組合員又は利害関係人」の請求権を無視したことにはならないということです。

いや、ちょっと待ってください。

管理規約では「閲覧させなければならない」と規定しているわけです。

ということは、「閲覧させて、そのコピーを渡さなければならない」としているわけではないということです。コピーにまで言及して管理規約を変更していれば話は別ですが、標準管理規約に則って「閲覧させなければならない」としている規約であれば、コピー(謄写)してくれという請求があっても、これを断れるというのが原則になります。

見せなければならないけど、コピーしたいんだけどという請求は断れる、ということですね。

これに対しては、すでに平成23年9月に東京高裁で、「謄写をするに当たっては、謄写作業を要し、謄写に伴う費用の負担が生じるといった点で閲覧とは異なる」として、標準管理規約の範囲内であれば謄写請求権を認めたものではないという判決が下されています。

ちなみに、会計帳簿とは、総勘定元帳、金銭出納帳、預金出納帳などを指し、什器備品台帳は、机や椅子、ロッカーやキャビネット、清掃用具などの備品について、購入年月日、購入金額、品名と数量、設置場所などを記載しておく台帳です。このほかに、領収書、請求書、管理業務委託契約書、修繕工事請負契約書、駐車場使用契約書、保険証券などがあります。

そして、請求ができるのは組合員すなわち区分所有者本人および利害関係人で、利害関係人はこれから区分所有権を取得しようとしている購入検討者、占有者(賃借人)、担保権者など、法律上の利害関係があるものが該当します。

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以上は、「マンション管理センター通信」2013年1月号の法律のひろば第25回「区分所有者による会計帳簿等の謄写請求を認めなかった裁判例」(山下渡辺法律事務所/弁護士 渡辺晋)の記事を引用・参照させていただきました。