修繕工事の見積りにおける「実数清算」についてのまとめ #マンション管理

改修工事の見積書を見ると、「実数清算」という項目があります。これは建築のなかでも改修工事だけで見られる独特な工事項目なのだそうです。

躯体補修工事や外壁タイル改修工事の工事項目に設定されます。

これについてまとめると…

実数清算は新築では出てこない。⇒改修工事独特の項目。

発注時に100%の数量を見積もることができないことによって発生する。

例えば、実際には足場を掛けてからでないと数量が把握できない項目は、想定した発注にならざるをえない。

発注先が目視等によって確認したものをもとに、「劣化数量」を「想定数量」として見積もる。

あらかじめ想定数量で総会決議されていないと、臨時総会を開く必要も出てくる。

想定数量は各社の任意なので、仕様が統一されていない。
⇒つまり相見積もりをとっても比較できない。

管理施工方式の場合は、使用をあらかじめ限定して見積もりを出させるので、比較も可能。
⇒管理組合の負担が減らせる。

想定数量が不足していた場合、着工後に追加等が発生し、トラブルになることもある。
※「見積りが安いから発注した」ことがトラブルの原因になることもある。

ではーー
足場を掛けて事前調査をすればいいのか?

⇒費用がかかるうえに、実際の工事では想定外の部分が出てくる可能性が大きい。つまり、事前調査では完全に数量を把握するのは無料。

ではーー
想定数量をオーバー目にとっておけば解決できるか?

⇒実数調査で仕事量が減った場合、入札した業者が困る事態になりかねない。
「少なくて済んだのだから安くして」と言われると困るので、材料や施工の工程などを誤魔化したりしかねない。

実数清算があるのは、総工事の項目のうち半分もなく、そのなかで実数の把握が必要となるのは数%程度であることから、もし負担が発生しても、工事費の総額からすれば軽微。
⇒施工業者が「一式」というような見積りを出しても神経質に数字を出させるよりは、質の管理に神経を使った方が得策。

これは「予備費」(通常は5〜10%)のなかで処理できる範囲。

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工事の見積りを精査するのは管理組合役員の大切な役目ですが、実際には業界関係者ではない者が見積書を眺めてもチンプンカンプンなことが多いでしょう。

ところが、にわか知識で「この単価はどうなんだ?」とか「数量を多めに請求して儲けようとしてるんじゃないのか」というような生産性のないイチャモンをぶつけて威厳を保とうとする役員が多いのも事実ではないでしょうか。

目的は改修工事を適正に、できればより良い状態で行なうこと。そのために余計な負担を業者にかけないことはもちろん、役員の負担も減らして、WinWinの関係で資産価値を高めるということが最善策になると思います。