「滞納」問題を考える 実例から見る対応策 #マンション管理

「滞納」問題を考える 実例から見る対応策|記事 2013.4.1:マンくみPRESS(春)2013創刊号

法律事務所に寄せられた、マンションの管理費・修繕積立金の滞納について解説した記事です。

例に挙げられている滞納者から滞納している管理費・修繕積立金を回収するために、差押等の法的手段は取れないかと弁護士に相談してきたようです。

しかし、「消費者金融会社に対する債務も幾つか抱えている模様であり、また、差し押さえるような財産も見当たらなかったため、仮に裁判を起こして勝訴判決を得ても、現実に回収できるかどうか危ぶまれる状況」であるということです。

さらに、「滞納者にはまだまだ住宅ローンが残っていたそうで、マンションの競売を申し立てようにも、この滞納者の居室に抵当権を有していた住宅ローンの債権者がその売却代金のほぼ全額の配当を受けることになり、配当を受けられない管理組合には、無剰余として、競売申立を行っても却下されることになるばかりか、マンションのローンだけは遅滞なく支払っているようであったため、債権者が抵当権の実行(競売)を申し立てることも見込める状況ではありません」と、打つ手がないような相手であることが浮かび上がってきます。

住宅ローンを支払わないと一発で持っていかれますから、ちゃんと理解して住宅ローンを支払い、早急に処分されない管理組合宛の債権は無視していることが濃厚になってきました。

こうした法律に詳しいタイプの滞納者は厄介です。

私が抱えている案件でも、いろいろと小細工をして、裁判が継続しないようにしてくる輩もいらっしゃいます。

話をもとに戻しましょう。

結局この件では、「区分所有法第59条に基づき、競売を請求すること」にしたそうです。

区分所有法第59条とはーー。

(区分所有権の競売の請求)
第59条  
第57条第1項に規定する場合において、第6条第1項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる。
第57条第3項の規定は前項の訴えの提起に、前条第2項及び第3項の規定は前項の決議に準用する。
第1項の規定による判決に基づく競売の申立ては、その判決が確定した日から六月を経過したときは、することができない。
前項の競売においては、競売を申し立てられた区分所有者又はその者の計算において買い受けようとする者は、買受けの申出をすることができない。

解説
第6条により、区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならず、本条は、区分所有者にこの義務を果たさない者がいる場合に、その者にかかる専有部分について、競売を請求することができることについて定めたものである。
競売を請求することができる場合は次のとおりである。
区分所有者の共同生活上の障害が著しい。
他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難である。
競売の請求は、集会の決議に基づき、訴えをもって行わなければならない。この決議は、第58条第2項及び第3項の準用により、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数で行うもので(管理規約で軽減することはできない)、決議に当たって、当該区分所有者に弁明の機会を与えなければならない。
この競売が認められるためには、他の手段では解決が困難であることが必要とする裁判例がある。
引用:WIKIBOOKS 建物の区分所有等に関する法律第59条

あれ? 競売を請求しても住宅ローンが残ってるから意味なかったんじゃないの?

そんな状態を救済するためにあるのが、この第59条だと言われています。

八方ふさがりではあるけれど、負債を放置させず、なんとか支払う方法を考えるための「前提条件」を作ろう、というものだと思います。

具体的には、競売を認めて、これ以上負債(未納管理費・修繕積立金)を増やさず、競落した継承人に対して請求できるようにしたほうがいいという考え方です。

もちろん、競売の金額のほかに滞納金がついてくるわけですから、落札される可能性が低くなるなどのリスクもありますが、手をこまねいているだけの状態からは脱却できるので、手間はかかりますが、有効な方法だと言えるでしょう。

ただし、第59条による競売請求の有効性については、別に裁判で争われていて、条件によっては認められない判決が出ていることもあるようです。

私は管理組合の代理として支払命令の訴訟などは管理会社の協力を得て行なっていますが、競売になるとやはり専門家にお願いしなければなりません。

いずれにしても、放っておくとどんどん滞納金額ばかりが積み上がり、取れる対策が限られてしまいます。

早め早めの行動が、「逃げ得」を許さないためにも必要だと思います。

文中引用:「滞納」問題を考える 実例から見る対応策|記事 2013.4.1:マンくみPRESS(春)2013創刊号