マンション管理組合の理事はやりたがっている人に任せたほうがいいわけでもない

 

マンション管理組合の理事問題では、なり手が少ないことが話題に上がることが多いようです。

もちろんそれも重大な課題なのですが、なり手がいれば解決するのかと言えば、そうでもないところが悩ましいのですね。

あるマンション管理組合では、立候補と輪番を組み合わせて、なんとか理事の定員を保っていたそうです。

しかし、立候補する人のなかに、自分の思い通りに理事会を動かしたいという人がいたことで、理事会がその人によって私物化されてしまいました。

こうした人、それほど珍しくないと思います。

実際に私が関係した管理組合でも、ことあるごとに口出しをしてくる理事がいて、辟易した経験があります。

こうした「迷惑理事」が発生する背景には、もちろん責任感が高じたものもあるでしょう。

理事になったからにはなにか「爪痕」を残したいという功名心も出ちゃうんでしょうしね。

それ以上にやっかいなのは、ほかに社会的な発言の場がないのでマンション管理組合をターゲットにするというもの。

これって、PTAなんかでもあるようですが、本人的にはよかれと思っていることでも、見当違いになっていることが多いから困るんです。

実際に理事会の主導権を握れるようになると、利益誘導のような弊害が発生する可能性が高くなります。

本人が「よかれ」と思っているから、歯止めが利きません。自分がこれだけ頑張っているんだから、これぐらいはいいだろう、いやこれが管理組合にとっていいことなのだというような、すり替えが事前に行なわれるからです。

こうしたモンスター理事は、往々にして権威的、つまり暴力的になっていきます。つまり、俺様なんですね。

 

俺様モンスター理事への対応

こういうモンスター理事、自分で手を挙げるから、なかなか排除できなくて困ります。

妙に熱心なのに、知識も社会的な常識も欠けていることが多いので、サイレント・マジョリティにとって不愉快なことを、自分の都合で押し通したりします。

決まってから文句が出ても、理事会決議されていては後の祭りです。

そうならないようにするには、まず役員の再選回数に制限を設けること。

マンション管理組合の理事は組合員みんなの問題だということを広めるためにも、輪番制は効果があります。また、理事を続けて権限を維持したいと思っているモンスター理事を、「管理組合のために改革しましょう」と説得する口実にもなります。

輪番制を強化することで、こうしたクレーマー勢力は弱体化するはずです。

また、これまで隠れていた人材を発掘できる可能性も出てくるでしょう。

私は、マンション管理士の資格を取得する前は、輪番制には懐疑的でした。

1〜2年でくるくる変わってしまうのでは責任が持てないし、かえって関心が薄れてしまうと思っていたからです。

しかし、実際に複数の管理組合の活動を体験してみると、関わりすぎる人の害のほうがそうではない人の害よりも影響が大きいことに気づきました。

関わりすぎる人がいるということは、管理組合へのほかの人の興味機会を減らすことにもなるわけですから。

継続して取り組まなければならない問題が発生したときには、専門委員会などを立ち上げればいいのです。

また、理事を替わったからといって、管理組合員であることに変わりはありません。発言する権利はなくなったわけではないのです。

もちろん、交代後の理事会を尊重することは言うまでもありません。理事会の意向に反して意見を言うのでは、モンスター組合員と思われてしまいますからね。

また、理事長や理事に話が通っていないと、管理会社のフロントの協力を得ることができないなどの“実害”も発生してしまうので、注意が必要です。

いずれにしても、誰かに集中することなく、負担は少なく効果の高くなるような、風通しのいい組織をめざすことが、“いいマンション管理組合”だと私は思っているのです。