マンション管理組合の理事長は理事会の決議で解任できると最高裁が判断しました

 

最高裁への上告で、
「マンション管理組合の理事長は、
理事会だけの判断で解任ない
とした二審判決を破棄し、
審理を差し戻した。」
(産経WEST 2017年12月18日)
というニュースがありました。

 

訴訟の内容

この訴訟の発端は4年ほど前。
原告の男性がマンションの
理事長に就任しましたが、
他の理事と対立。

半年後にその理事長が
欠席した理事会で
別の新理事長が選任されました。

それに対して、
先に理事長に選ばれていた
男性が解任の無効を訴えた
というもの。

 

問題点

この訴訟の問題点は、
理事会で代表者(理事長)選任の
期間中のやり直しができるか、
すなわち理事長解任を
理事会決議でできるかどうかを
争ったものです。

理事の代表者(理事長)について
国交省の標準管理規約には
定めがなく、これまで原則は
任期中の解任ができないと
考えられていたのが実態でしょう。

この訴訟のマンションも
規約は標準管理規約に基づいた
ものであったと推測され
訴訟は手続きの不備ではなく、
規約に明記されていない
「任期中に別の理事長選出を
理事会決議でできるのか」
つまり「理事長解任が
理事会決議で可能なのか」
を争うものになっています。

 

訴訟の経緯

一審は「「規約上、理事長を含む
役員の解任は総会の議決事項」とし、
解任はできないと判断。
同10月の高裁判決も支持」
でした。

要するに、管理組合理事や
半数以上の理事が臨時総会を
提起・招集し、相応の事由で
理事長を解任する旨の議案を
上程して、決議されなければ
一度決めてしまった理事長を
任期中に解任できない、
というわけです。

この考え方が、これまで
管理組合運営では依るべき
ものであるとされていました。

 

最高裁判決について

これに対して組合側は
「理事会は互選で理事長を
選任できるのだから、
選任に準じて解任できる」
と主張して上告したわけです。

そして、最高裁第1小法廷
(大谷直人裁判長)は「規約上、
理事の互選で選任された理事長は、
理事の過半数の一致で理事長の
職を解くことができると解される」
と指摘、解任できないとした
二審判決を破棄し、
審理は差し戻されることに
なりました。

 

理事長選任の今後は?

差し戻し審ですが、最高裁で
「理事会決議での理事長再任等の
決議は妥当」との判断が示された
ので、今後はこの判断に準拠
するものとなるはずです。

管理組合の代表者選出は
重大事ですが、成り手不足や
権限集中を防ぐことを考えると、
実態に配慮した判断と
言えるかもしれません。

この訴訟では、管理会社の
選定をめぐって理事会内で
対立することになり、
理事長が独走しないように
理事側が団結したようです。

理事会は管理組合組合員の
代表者が運営するわけなので、
合議的な権限の分散を考えた
将来的な判断と受け取る
ことができるでしょう。

輪番制や成り手不足など
存在感が薄れる理事会
ですが、「誰かやってくれる
人に任せればいいや」
ではなく、少しでも当事者
としての意識を共有できる
ようにという考え方がある
のではないかという
期待をもってこの最高裁の
判断を受けたいと思います。